2009/7/28
「通信を傍受したので聞いてください。」
「!!! これはっ。」
「間違いなければ……。」
日曜日の朝、警察署に一通の手紙とカセットテープが届けられた。内容は怪しい会話で、カセット時間は凡そ5分程しか無かったがザザッと聞こえる雑音に混じって数人の人間が会話しているものだった。
「しかし課長…雑音無視すると分かりますが、もしかして会話の中に居る人物って。」
「……佐貫刑事を呼んでくれ。」
「分かりました。」
数分後呼ばれた佐貫が室内へ入ってくる。
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「お呼びでしょうか、課長?」
「佐貫君、突然呼び出して申し訳ないね。実は…これを聞いて欲しいんだ。」
課長に見せられるがまま、再生を始めたカセットテープから聞こえる声に驚きの表情を隠せなかった。
「……え、で、でも……でも…これって……。」
「今日朝に署のポストに投函されていた品物だ。誰が投函したか分からないが、このカセットに登録されている人間の一人は間違いなく……鷺沼だ。」
「鷺沼さん……どうして…」
「佐貫君、何か知らないか?」
「そんな! 僕は知りません!! それに鷺沼さんがどうしてこんなっ。何かの間違いです。もしかしたら悪い奴に何か握られて…」
「…だとしても本人から直接聞くしかないだろう。」
一室でまさかの状況に佐貫はありえないと首を横に振った。
その一室のドアの前には鳴沢が立っていた。廊下から話を一部始終聞いていたのだ。
「鷺沼…… くく… やはりお前は『カラス』の一味だったと言う事か。敵は近くにいた。くくく鷺沼………年貢の納め時だなッ!」
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一方、そんな事態が起こっているとは知らない鷺沼本人は自宅で携帯ゲームをしていた。
「………懐かしいなテトリス。」
しかし突然の電話にテトリスは強制停止させられた。
「ふざけんなマジで。……もしもし?」
基本鷺沼は電話をアドレスに登録しない。だが大体は把握しているので誰から掛かってきたかわかる。しかし今回はどっちだったかと思いながら、普通に電話に出たのだ。
『鷺沼、10分後に与野志木(よのしき)商店街の奥、倉庫の前に来い。』
ーーープツン。
電話は切れた。
相手は鳴沢に間違いなかった。
「意味わかんねぇしアイツ。どんだけ俺に恨みがあるんだよ。休暇中だってんのによ…」
呼ばれたからにはと思うが気乗りはせず、何らか理由があるから呼び出したんだと思えば軽く仕度をして指定場所へと向かった。
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早くも場所には鳴沢が居た。
「…来たな鷺沼、今日は貴様の年貢の納め時だ。包み隠さず話して貰うぞ!」
「……は? お前頭可笑しくなったんじゃねぇ? つか…何を話せって。」
「先ずはコイツを聞いてもらおう!」
鳴沢が取り出したのは課長らが検証していた、朝届いたばかりのカセットテープ。鳴沢はドアの微かな隙間から、自ら別のカセットに録音していたのだ。
『 ーーーカラス 』
『 任務、場所は分かっているな? 』
『 勿論だ 』
『 失敗は大きなミス、必ず成功させるさ 』
所々雑音で聞こえにくいが一通りを聞かせた鳴沢は、鋭く鷺沼を睨みつける。
「きっさまぁ…! 『カラス』の仲間なんだろうッ?!」
「……………。」
鷺沼は黙ったまま口を開かない。
鳴沢はにやりと笑みを浮かべると鷺沼に近付いた。
「鷺沼。正直に話したほうが身の為だ。お前も出世を考えてるんだろう? どうだ、俺と取り引きしないか?」
「……鳴沢…何を考えてるんだ。」
「俺は出世の為にお前を売る事も出来る。だがお前と同期だからな、お前の出世は今後……いや、もしかすれば刑務所行きだ。それは貴様も避けたいだろう?」
「鳴沢……」
鳴沢は自らの出世の為に鷺沼に交換条件を持ちかけようとしていた。
しかし頑なに黙り込む鷺沼に、段々と苛立ちを見せ始める。
「鷺沼、俺には包み隠さず言ってくれ。お前は『カラス』の一味であると。………なぁ、鷺沼、頼む。俺とお前の仲じゃないか。」
「…………鳴沢………。」
そしてついに鷺沼が黙ったままに耐えられなくなった鳴沢が拳銃を片手に、鷺沼の額に口を向けた。
「白状しろ!! お前なんだろうっ! 俺は全て分かってるんだ。俺はお前を殺したくない……、鷺沼! 俺の為に全てを吐き出せ!!」
鳴沢が拳銃を発砲した。
近距離発砲は考え難いことだが間違いなく撃ったのだ。
弾丸は鷺沼の急所を外したが、僅かに避けてもこめかみを僅かに掠った。
急激に鼓動が早くなった鷺沼は軽く舌打ちし、鳴沢の拳銃を手から離そうと掴みかかった。
「鳴沢ぁー!」
「……くくく……貴様はカラス、カラスカラスカラスカラスカラス!!! くはぁーっ、カラスカラスカラスカラスゥゥフフフフフ!!!!」
急激に狂い始めた鳴沢から銃を落とす事が出来なかった。
特に何も持ってこなかった鷺沼は逃げるしかない。障害物があれば利用出来るが、そんなものはここ周辺にはない。
「カァアァァァアアラァァァアアアスゥウウウウウフフ!!」
「………。」
私利私欲のために仲間を売ろうとする鳴沢の行動は最早犯罪者と同じにしか見えなかった。
「鳴沢…、すまん。」
僅かに同情しつつも鳴沢の足を掛けて、横転させた。同時に銃は手から離れる。
素早く手に取り、拳銃を鳴沢に向けてやった。
「俺の出世出世… さぁぎぃぬ、ま……ぁぁ。」
「…………俺も何時かお前と同じ道を歩むだろう。だから先に逝ってくれ、お前は……死ぬべきだ。」
「!!!? や、やめぇ!! ひぁああや、ぁぁっ!!」
鷺沼の冷酷な瞳を叩きつけられた鳴沢は急に懇願し始めた。鷺沼の足にしがみ付き、ガタガタ震えている。
「さぎぬまぁ〜やめてぇぇ、ころっ…殺さなぃでぇえ!」
「しつこいぞ鳴沢。アンタは既に堕ちてるんだよ……。」
「……やぁああだぁあああ! 鷺ぬ、まぁぁあ……助けッ、助けてえーー!」
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ーーーーッパァン!!
眉間に一発弾が打ち込まれた。
ドクドクと出血激しく地面に伏せた鳴沢。即死。
「…………」
鷺沼はすぐ署に連絡を入れた。
『はい、此方ーーー』
「鷺沼だ。………鳴沢を殺した、パトカー…一台と佐貫、課長を来させてくれ。あー…後、救急車。」
『えっ?! サギ!! ねぇ、サギどうしーーー』
電話はすぐ切れてしまった。相手は受付の波音だった。鷺沼は必要以上を喋らずただ屍となった鳴沢を見下ろし誰も居ない倉庫の前で、甲高く声を上げて笑った。
まるで人殺しが日常かつ、自分の存在を示すように。

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