(ジェラードの口付けを受け、ロザリアは目を覚ました。頬は半吸血鬼とは思えないほど高潮しており、目は大きく開かれ驚きの表情を浮かべていた)
ロザリア>ジェラードさん、私・・・
ジェラード>甦ってくれたのだな、ロザリア!!
ロザリア>・・・
(自らの口付けで甦ったロザリアを見て、ジェラードは歓喜の表情を浮かべた。そんな彼の態度を見て、ロザリアは驚愕の表情を瞬時に悲しみに満ちた表情に変え、叫んだ)
ロザリア>ごめんなさい!!ジェラードさん!!私が・・・貴方とサモンロードとの戦いに入り込むような真似さえしなければ、私の死で、貴方に悲しみを与えずに済んだのに!!貴方の心を、苦しませずに済んだのに!!
ジェラード>いいや、悪いのはお前じゃない
(ジェラードは謝罪の言葉を口にする彼女に対し、優しい声で言った)
ジェラード>悪いのはこの俺さ。あの時俺がお前を護ってさえ居れば、お前が死ぬ事などなかったのに。お前を護れなかった事を・・・俺は今でも、悔やんでいるよ。
ロザリア>そんなに自分を責めないで、ジェラードさん
(悲しげな声で言うジェラードを見て、ロザリアは諭すように言った)
ロザリア>もう、私達の魂が離れ離れになる事はないのだから
ジェラード>そうだな
(ジェラードは彼女の言葉に頷くと、辺りを見回した。
先程まで城を包み込むように激しく闇に燃え上がっていた炎は既に消えかかっており、戦いの終わりを象徴しているかのようだった
ジェラードは呟いた)
ジェラード>これで総て、終わったな・・・
ロザリア>ええ、終わったわね・・・
(ロザリアもジェラードと同じ、消え行く炎を見つめながら呟いた。
徐々に消え行く炎の先には、黒々とした夜空が広がっていた。星が煌く美しい夜の空。それは今のジェラードとロザリアにとって、希望の星のように見えた)
ロザリア>戦乱の夜が終り、新しいあかつきの世界がこの国に訪れようとしている。果たしてその世界は、どんな物になるのかしらね
ジェラード>どんな物なのだろうな、俺達次第でこの国の未来も変わって行く。2人で協力して、今までにない人と魔族が共存できる明るい世界を作ってみようじゃないか!!
ロザリア>そうね、私はずっと貴方を応援しているわ!!
ジェラード>俺も、お前が死するそのときまで俺の傍に居てくれる事を信じているよ!!
(ジェラードが言うと、ごお!!と強い夜風が吹き荒れた。
夜風に吹かれて、サモンロードの体であった灰が徐々に夜空へと舞い上がって行き、消えて行く。ジェラードは夜空に風と共に消えて行く灰を見つめながら、ロザリアに言った)
ジェラード>帰ろう!!俺達の仲間の待つ場所へ!!
(サモンロードの牙の洗礼を受けた兵士達は、サモンロードが滅びると同時に瞬時に灰の山と化し、消えて行った。
勝利はマルグリット達の手に収まった。だが、彼女達は喜びの表情を浮かべる事ができなかった。
彼女達は不安げな表情で、城の屋上を見つめていた)
マルグリット>どうやらサモンロードは滅びたようだが、ジェラード、ロザリア・・・果たしてお前達は無事なのか?!
セリーヌ>ロザリアさんが心配だわ・・・まさか、奴の牙の餌食になったりはしてないでしょうね?!
ジャクラ>2人共、無事で居てくださいよ
(城を包み込んでいた炎も、消えかかり、戦乱の夜は徐々に終焉の時を迎えようとしている。しかしジェラード達が戻ってくる気配が一向にない)
ロシェーヌ>まさかサモンロードを殺した瞬間に、道連れにされたとか・・・
セリーヌ>馬鹿なこと言うんじゃないの!!ロシェーヌ!!
フレデリック>あっ!!見て?!
全員>えっ?!
(セリーヌがロシェーヌを怒鳴りつけると、それまでジャクラの肩に乗っていたフレデリックが城の階段を指差し言った。マルグリット達の視線が、一斉にフレデリックの指先へと向かう)
マルグリット>ジェラード・・・
ジャクラ>ロザリアさんも無事ですよ!!
(そこに、ロザリアを抱きかかえるジェラードの姿があった。ジェラードはロザリアを抱きかかえたまま、階段を下りて行き、地面に降り立つとマルグリット達の方まで歩み寄ってきた。
その瞬間、それまで不安に満ち溢れていたマルグリット達の表情が一気に歓喜に満ちた物へと変わった)
マルグリット>皆喜べ!!ジェラードは無事に生還したぞ!!彼の勝利だ!!
ジャクラ>ジェラードさん・・・野薔薇の皇太子様の勝利です!!
ロシェーヌ>野薔薇の皇太子、万歳ーーーっ!!
(思い思いの声をあげ、ジェラードの傍へと駆け寄るマルグリット達。ジェラードは彼らに向かって、明るい笑みを浮かべた)
ジェラード>おいおい、皆俺の勝利を信じていなかったのか?!異常な喜びようだな!!
(ジェラードは全身をべっとりとした鮮血に汚していたが、表情は明るく、活気に満ちた物だった。
どれだけ戦っても、どれだけ傷ついても、彼は弱音を吐かず、悲しみの表情を浮かべない。その事は、今この場所に居る彼を信じる者達総てが知っていた。
彼の姿は、たとえ鮮血に汚れていても美しい。まさにジェラードには、吸血貴族<ヴァンパイア・ノーブル>の称号が相応しいと、この場に居る誰もが改めて思わされた)
ジャクラ>何を言いますか、私達は貴方の勝利を信じていましたよ。だからこそ嬉しいのですよ・・・貴方が生きて戻ってきた事が
(ジャクラは目を閉じ、涙をこぼしながら言った。するとそんな彼の背後から、セリーヌが姿を現し)
セリーヌ>どんな時でも諦めず、最後まで愛する人を護り戦った貴方はやはり強い男よ。私、尊敬するわ!!
ロザリアさん、貴女もこんなに強い男に愛されて幸せな女ね!!
ロザリア>やだ!!セリーヌさんったら!!恥ずかしいじゃない・・・
フレデリック>ジェラードさん!!よく頑張ったよ!!
(ジェラードの肩を、ジャクラの右肩に乗りながら叩き、彼を励ますようにフレデリックが言った)
ジャクラ>フレデリック君、子供の貴方が言える台詞じゃありませんよ
フレデリック>にゃっ!!いいじゃない!!
(偉そうな口調で言う彼の頭を、ジャクラが小さな扇でぺちり、と叩いた。その瞬間、マルグリット達の中から小さな笑い声が漏れた)
マルグリット>ジェラード、サモンロードは死に際・・・何か言っていたか?
ジェラード>いいや、何も。ただあいつは最後の最後まで欲深く、傲慢な男だったよ。
マルグリット>そうか
(マルグリットは少し悲しげな笑みを浮かべ、ジェラードの方を見た。
銀の髪を夜風に揺らし、優しい表情を浮かべるジェラード。月光に照らされた彼の姿は、まさに荒れ野に咲いても美しく、刺々しくも気高い、どんな逆境にも耐え抜く事のできる野薔薇その物だった。
彼女は呟いた)
マルグリット>気高く咲け、そして常に優しく美しくあり続けよ、銀の野薔薇よ・・・
(これから彼が恋人と共に作り出す時代がやって来る。それはきっと希望に満ちた明るいものに違いない。期待が出来そうだ、とマルグリットは思った)
あかつきの世界「野薔薇は気高く咲きて」<終>