天の原、行きて射てむと、白真弓、引きて隠(こも)れる、月人壮士
天の原を往き来して獲物を射止めようと、白木の弓を引き絞ったまま、山の端に隠れてしまった月の舟の若者よ。
さ夜更けて、出で来む月を、高山の、嶺の白雲、隠すらむかも
夜が更けたら、もう出てきても良いはずの月なのに、ひょっとすると高い山の嶺の白雲が覆い隠しているのであろうか。
味酒(うまさけ)の、みもろの山に、立つ月の、見が欲し君が、馬の音ぞする
みもろの山に立ち出る月のように、逢いたい逢いたいと思っていたあなたの、馬の足音がする。
大船に、真楫(まかぢ)しじ貫き、海原を、漕ぎ出て渡る、月人壮士
大船の舷(ふなばた)に櫂(かい)を取り付け、海原を漕ぎ出して渡って行く月の舟の若者よ。
白露を、玉になしたる、九月(ながつき)の、有明の月夜、見れど飽かぬかも
白露を玉に変えている有明の月は、いくら見ても見飽きることがない。
落ちたぎち、長るる水の、岩に触れ、淀める淀に、月の影見ゆ
激しく落ちて逆向きに流れる水が岩に当たって堰きとめられ淀んでいる淀みに、澄みきった月の映っているのが見える。