2009/11/15
「空気人形」と是枝監督トークイベントのこと。 映画

11月14日、映画「空気人形」を見てきました。
けっこう序盤のあたりからぼろぼろ泣いてしまった。
なんでかというと、この映画を見る前にもう見た人のブログで映画で使われたある詩の引用を読んでいて、その詩にすごく魅力を感じながらも、どこかすべてが自分の腑に落ちないような、すべての意味をいまいちつかめないような感覚だったのが、映画を見てあまりにもすんなりとしみじみと「ああ、こういうことだったのか」とわかったような気がして。
その詩というのがこちら。
生命は
自分自身だけでは完結できないようにつくられているらしい
花もめしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ
世界は多分
他者の総和
しかし
互いに欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれているもの同士
無関心でいられる間柄
時にうとましく思うことさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのはなぜ?
花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした若者が
光をまとって飛んできている
私も あるとき
誰かのための虻だったろう
あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない
―吉野弘 「生命は」より
映画の中でこの詩を空気人形役である主人公のぺ・ドゥナが朗読する場面があるんだけど、この最後の
「私もあるとき 誰かのための虻だったろう
あなたもあるとき 私のための風だったかもしれない」
というのが自分の中で少し「?」だったのが、解けた感じがした。
そしたら涙がこみ上げてきて止まらなくなった。
あまり逐一感想を言っていくのも野暮だし、これから見る予定の人にはネタバレになってしまうので、私の感想としてはこのぐらいにしておこうと思う。
この詩の意味を一度かみしめてから見るのとそうでないのとではかなり違った見かたができるかもしれない。
どっちがいいのかはわからないけど、私はこの詩を読んで味わってから見れてよかったと思っている。
それから、自分の誕生日の2日後にこの映画を見れて本当によかった。
(ラストを見ればそれがわかると思います。)
そして映画の上映のあとには、是枝監督が壇上に登場、トークイベントがありました。
お客さんと監督との質疑応答だけで30分!
すごく贅沢。
残念ながらすべての質問を把握&記憶しきれてないので、私が(!)質問したことと、監督の答えをはしょって書こうと思います。
質問:是枝監督の作品は、今回の作品に限らず、境目の中で生きる人たちを描いた作品が多いと思います。
今回この作品で「人間と人形」という境目がすごく生々しくなおかつきれいに描かれていたんですが、その境目のリアリティと美しさを両立させるために苦労したこととか、特別意識したこととかはありますか?(今振り返ってみるとちゃんとこういう文章で聞けてなかった気がする…汗)
答え(監督)(以下意訳):「…難しい質問だな(苦笑)
非日常な空間だったら人形が動き出しそうな場所だなぁと思って、舞台を繁華街から少しはずれたところにしました。
あと、自分が人形だったら透けるのがいやだろうなぁって考えたり、今回オダギリジョーさんの役にあたる、実際に人形を作っている方に取材させてもらって、その方が『人形の貼り合わせた部分の線を消してあげたい』『体温を持たせてあげたい』っておっしゃってたので、そういうのを参考にしました。
その結果、リアリティを出すことにつながったかもしれません。」
他の方の質問でも言ってらしたんだけど、監督は本当に人形を買ってみたり、実際に作っている業者に取材したり、その業者に紹介してもらった人形ユーザーの方にも取材したりといったことをしていたそう。
そういった話を聞いて思ったのが、
「美しさというものはリアリティを追求するところから生まれる」
ということでした。
私自身、正直に言ってこの映画を知ったときの第一印象は「かわいらしいファンタジー」でした。
そうとらえる人も多いと思う。
でもそれだけじゃなかった。
そこにはちゃんとリアリティがあった。
この映画には監督の「現実から目をそらさず、でも現実と適度な距離をもってリアリティを追求する」という日常の生き様があらわれていて、だから少し異質なテーマが違和感なくすっと入ってくるのだと思った。
一人ひとりとじっくり考えて会話するように真摯に質問(私の答えづらい質問にも)に答えてくださった監督に感謝です。
あと、なんとイベント終了後に監督がパンフレットにサインしてくださいました。

ああなんというしあわせ。
サインしてもらってるときに
「答えづらい質問に答えてくださってありがとうございました」
とお礼を言ったら、
「いえ、とんでもないです」
と言ってくださいました。
有意義な時間を過ごせてよかった。
また何度も見たいです。
◆追記◆
トークイベントの模様(すべての質問とその答え)が会場のシネモンドという映画館のHPに載っていました!
こちらです
→http://www.cine-monde.com/news.html
スクロールしていくと出てきます。
私の質問は5番目の質問です。
こちらのテキストを読んだほうが確実かもしれません。すみません。
シネモンドのBBSを見てたら、スタッフさんによると、トークイベントが終わった後に是枝監督が「いいお客さんだったね」と言っていたそう。…うれしい!
あとそのスタッフさんが「監督の返答もさることながら、質問もすごくいいなぁと思った」と書き込みししてらっしゃいました。…うれしすぎる。涙。
行ってよかった。勇気出して質問してよかった。
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