地球上に自生するバラの野生種はおよそ150種あると言われながら、
その基をたどれば、8〜10種、もしくは10数種に辿り着くと言われている。
しかし、それは自然界の中でのこと。それも遠い過去のことであり、
それらは現在までにわかっていることから推論するしかないわけだから、
このような判断も人によって、また、時代によって変わってくる。
そこで、それらの基本種についての説をいくつかとりあげてみようとおもう。
まず、大場秀明著「バラの誕生」(1997年)の中では、
「シェパードは、現代のバラの園芸品作りに貢献したのは、
そのうちのたった8種にすぎないと言っている。」(p,56)と書いており、
その8つのバラは、日本のノイバラ、テリハノイバラ、ハマナス、コウシンバラ、
ローザ・オドラータ、ローザ・フェティダ、ローザ・モスカータ、ダマスクバラである。
(シェパード氏がどのような方なのか、わたしは知らない。)
次に、野村和子著「オールド・ローズ花図譜」では、
「現在栽培されているバラを遡ると、それらたくさんの原種のうちのわずか
10数種類にたどり着くとされる。」としているが、実際名前が出てくるのは、
ロサ・ガリカ、ロサ・キネンシス、ロサ・ムルティフローラ(ノイバラ)、
ロサ・ルキアエ(テリハノイバラ)、ロサ・ギガンティア、ロサ・フォエティダの
6種にとどまっている。
と、言葉を濁しているのは、確実な部分は書けても、これから先は不確定要素があって、
ということなのだろうか?
だいたい10数種類という言い方自体も幅を持たせた言い方である。
最近上梓された「オールドローズと現代バラの系譜」では、
「モダンローズにつながった野生種」ということで、次の9種をあげている。
ロサ・フェニキア、ロサ・ガリカ、ロサ・モスカータ、ロサ・カニーナ、
ロサ・フォエティダ、ロサ・キネンシス、ロサ・ギガンテア、ロサ・ルキアエ、
ロサ・ムルティフローラ である。
ただし、この「モダンローズにつながった野生種」は図解されているのだが、
どれが著者の言いたい9種なのかわかりづらいとおもうのはわたしだけだろうか?
(たしかに色分けはされているのだが・・・)
さらに、(p.8)「以上4種が中世から近世のヨーロッパで盛んに栽培されていました。
まだ積極的な人工交配は行われず、18世紀後半から19世紀初頭に中国や日本の
野生種が渡欧するまでは、意外なことにわずか4種のバラしかありませんでした。」
とあるが、「わずか4種」と言う言い方はどうなのだろうかとおもう。
その4種はロサ・フェニキア、ロサ・ガリカ、ロサ・モスカータ、ロサ・カニーナで
あることは文章を読めば解釈はできるが、この言い方は紛らわしいとわたしは感じてしまう。
では、それらの交配によってうまれていたロサ・ダマスケーナやロサ・ダマスケーナ・ビフェラ、ロサ・ケンティフォリア等は本文中にも挙げられていながら不明確であるように思える。
そして、「現存不明」とされているロサ・アルバはそもそもが雑種起源であり、
それそのものが存在しないこと、ロサ・カニーナは5倍体であり、これも雑種起源であることを専門家の説明により確認した。
話は少し逸れたが、その、園芸品種作りに貢献したバラでもよいし
、モダンローズにつながった野生種でもよいのだが、それらもととなった野生種
(この場合は原種としてもよいわけだが)に変化があるのは、何を出典にしているのかはわからないが、ひとによって捉え方がちがうということであり、今後も変わりゆく(新説)可能性は大きいともおもわれる。
バラの歴史は長く、バラの研究はそれほど長くはない。今後もいろいろな資料や科学的な解析をもとに成果があることだろうが、自然界のはるかな営みをそうたやすく分かることはない(正解はない)だろうし、またそのことをわたしは心地よくさえ感じる。

9つの野生種には加えられなかったロサ・ルゴサのハイブリッド
マダム・ジョルジュ・ブリュアン
2番花もたくさん咲いています。