土曜日の夜の早い時間となれば、航介のバーには馬券仲間が集う。
北二十四条界隈の酒&女&馬券好き。
水道屋の晴彦もいきりたっていれば、蕎麦屋の丸山に、おでん屋の大沢も新聞とにらめっこ。
今宵顔を出していないのは、自分のバーを営業中のヒロ坊に、GWは愛妻と旅行に出かけたジャンパパといったところか。
なぁに、ヒロ坊は深夜になればあーだか−だ言ってくる。
まずは晴彦。
「メイショウサムソンの取捨だな…。買ってあげたいんだがなにせ有馬記念からの負けかたが気にくわねぇ。古豪のポップロックと地方出身の新人、内田博幸が劇的な勝利ってのはどうだろうな。アオポッパーやトウカイトリックあたりだって長距離実績はあなどれねぇ。実は4歳から6歳までの世代は超弱いかも」
「最近売れっ子の相武紗季っているでしょう。去年までJRAのイメージキャラクターでしたよね。アサクサキングスと名前が似ているからどうでしょう」
これは蕎麦屋の丸山。
相も変わらずケントク買いが大得意。
航介が丸山を睨みつけている。
北二十四条界隈の馬券師たちの多くはアサクサキングスを。
中には横山典弘のホクトスルタンの逃げっきりと叫ぶ輩も。
みんなが思い思いの本命を口にし終えて、場が落ち着いてから、航介が瓶ビールの栓を抜きグラスに注ぎだした。
一口目で2度ほどゴクつき、全員に視線を配ってから見栄を切る。
「四位って野郎は人気を被ると途端に乗れなくなるボンクラ野郎よぉ。アサクサキングスは脚を余してしまう結果になるべ。メイショウサムソンは俺が買うようになってから全くもって走らなくなった。去年の秋から馬を休ませなかったことがたたっているようだ。横山の馬なんざ所詮はやっとオープンにあがったばかり。アドマイヤモナーク・ポップロック・アドマイヤジュピタの争いになると見ている」
「実績的に見てもポップロックじゃねぁか?」
「あぁ、間違いなく好走してくれて常に安定している。だが、それだけの馬。これまでもGTを勝てなかったのは運なんかじゃねぇ。それが実力ってこと。今回も勝つことはないだろう。ワイドの相手だ。」
「岩田のアドマイヤジュピタか?」
「おぅ。むろんオムロンってとこよ。阪神大賞典での勝ち方がイイ。岩田も相当この馬に惚れ込んでいるようだし、行き脚つけて番手につければ大外枠も気にはならない」
「ちょっと待て!おめぇなんだか歯切れ悪くねぇか?強調点が前走の勝ち方と、岩田の入れ込みだけってか」
と晴彦。
「うーん。やっぱアサクサキングスが気になるんだ。四位じゃなくて藤田や外国人騎手であれば鉄板宣言のうえに全財産ブチ込めるんだが…」
●天皇賞:春(GT)
京都競馬場T3200m
◎Mアドマイヤジュピタ(岩田康誠)
単勝 5万円
複勝 10万円
ワイドI−M 1万円