2011/2/5

出エジプト記  

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1月末、かねてよりくすぶっていた北アフリカの情勢が緊迫し始め、エジプト行きをきっぱり中止すべきかどうか悩みに悩んだ末、渡航した。2泊3日だったしカイロ空港から車で10分ほどのホテルで、2日目にピラミッドだけをチラ見する計画だったので中心部のデモ隊と遭遇することもなかろう..と思ってしまったのが失敗だった。ホテルに到着後テレビをつけるとムバラク大統領がスーツ姿で演説を繰り返していた。翌早朝、旅行会社から「ピラミッド観光中止と外出は一切しないで」という一報を受けテレビをつけてみる。やばい。ムバラク大統領がスーツから軍服に変わっている。言ってる事は全然分からないけど、徹底抗戦的な意思表明なんじゃ..と、とにかく脱出っ。

本来2泊3日の予定だったが1泊しただけで、ピラミッドそっちのけで翌朝荷物をまとめて空港へ向った。行き先はミラノでなくてもどこでもいいからエジプトから出たい。残念ながらチケットはどうしても取れず、ホテルへ戻り当初の予定通りもう1泊して再度、空港へ。昨日はもっとスムーズに空港へ到着したのに、恐ろしく渋滞していた。途中の道には戦車も出て検問所が出来ていて、たった1日で事態はかなり深刻になっているのが十分に見てとれた。なにがなんでも出発ロビーへ入らなければ!空港の入り口には大群衆が詰めかけており、殺気立った人々の中少しずつジリジリと入り口を目指してにじり寄る。家人はエジプト人らしき女性に服を掴まれて「私の方が先だ!」とギャーギャーわめかれているし、人々が興奮しているのが怖い。30分ほどかけてやっと建物の中へ入った。入ってみると中は外以上に更なる大群衆がひしめきあっており、チェックインカウンターにどうしても近づけない。「赤ちゃんがいます!押さないでーっ!」と悲鳴のような金切り声があちこちから聞こえる。泣き叫ぶ女性、飛び交う罵声と怒号。女性であろうが赤ちゃんであろうが、弱い者は押しつぶされても踏みつぶされても仕方ないでしょ..誰もが他人を気にかける余裕が無い、そんな空気だった。過去に何度かニュースで見た「詰めかけた群衆が将棋倒しになって云々」の事件が頭をよぎる。建物の中に人がすし詰め過ぎて、どうしてもチェックインカウンターの方へ移動できないので、しびれをきらした男性が壁際に連ねてあるカートの上によじのぼり、その上を移動し始めた。仕方なく我々も続いた。カートの上を歩く事自体、危なっかしいのにスーツケースも自分で確保しながら進まなければならない。途中でバランスを崩してカートが前後に移動して股割き状態になってしまった。「た、たすけ..」と家人の方に目をやるとカートの上でアラブ人の赤ちゃんを抱っこしている。だめだ、どこの赤ちゃんか知らないが、あれをお母さんだか親類の人に手渡すまでこっちの助けには来てもらえない..股割きは自力でなんとか切り抜け、髪をひっぱられたり、人のリュックで顔を挟まれたりしながらチェックインカウンターまで辿りついた。ここまでくればまっすぐ歩ける、足下が見える。チェックインを済ませ、最後の関門である荷物検査へ向うにはもう一度あの大群衆の中をすり抜けなければならない。ここでもまたキレて叫びまくってる人や泣いてる人を尻目に自分も必死に前に進み、息が出来ないほど圧迫されながらよやく群衆を横断し、搭乗口まで辿りついた。やっとの事で帰宅してテレビをつけると相変わらず混乱したカイロの様子が写し出されていた。まるで遠い世界の事になっていて現実味のない映像に思えたが、確かに同日の昼まではあそこに居たのだ。ホッとすると一気に疲れが出てきて何やら体がとても痛い事に気がついた。膝から下にいくつも出来た青あざを見ながら、無事に帰ってきた事の有り難さを実感せずにはいられなかった。行く前に旅行社とも散々相談し、外務省のホームページ諸々色んな情報を得て検討して、この日程と予定なら大丈夫では?と判断した自分の危機管理の甘さが情けない。そして飛行機を飛ばしてくれたアリタリアに感謝したい。未だ終局に向いそうにないエジプトの混乱が早く落ち着きますように。ー写真はカイロ空港でチェックインカウンターの入り口に群がる人々ー




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