過日起きた証券取引所におけるトラブルについて、興味深い文章(2005年11月14日の読売新聞朝刊の編集手帳)を見つけたので、これに関する考察を書かせて頂きたい。それは競輪競馬における「ノミヤ殺しの手口」と、株式市場における「見せ玉」の類似性についての指摘だ。
この「見せ玉」とは、「持ち株を売る時、安値の買い注文を大量に出すこと。あるいは株を買う時に高値の売り注文を大量に出すこと」である。これは株価の変動に伴って売買が成立しないようにキャンセルされることから証券取引所のシステムに多大な負担を掛けているとのことである。その比率は今や全体の4割にも及ぶとか。「ノミヤ殺しの手口」はこれに類する行為であり、現在は売上高の増大と予想配当が刻々と発表されることにより不可能となったそうである。
このことは様々な感想を抱かせる。まず競輪競馬の経験が株式市場においても役立つということの不思議だ。まあ仕組みが同じなのだから当たり前と言えば当たり前だが、このような場所での経験を現実社会でも役立てている人も存在するのだろうなと想像してみるのは楽しい。世のまじめな方々はこのような賭博行為は百害あって一利なしとして片付けることだろうが、案外社会にとって貴重なこの種類(リスクのある行為)の経験を積むことのできる場所であるのかもしれない。
仕組みが同じならば同じ経験則が成り立つとすれば、ナンパだってリスクのある行動には違いないし、株式市場も、飛び込みのセールスも同じ経験則が成り立つことになる。優秀なセールスマンはこのような場所(株式市場や賭博行為等)でその極意を習得しているに違いない。
またこのように考えると、「見せ玉」が、株式市場において有効な手法となっていることは不思議でもある。そもそも「安値の買い注文」が、買いを望んでいるという分析は間違っているのは明らかなのに、なぜこの手法が横行しているのだろうか。それは現在の株式市場において主流を占めている分析のやり方に問題があるのに違いない。このような「安値の買い注文」を買いを望まない意思の表明として、「高値の買い注文」を買いを望む意思の表明として分析する方法が開発されれば、この「見せ玉」は効果を失ってしまうのは明らかだ。
なのになぜこのような方法は開発されないのか。これはこの現状を望ましいと考えている人が多いからだと推察する。つまり「見せ(偽り)」であっても株価に影響する以上関係ないと考えているのだ。この「見せ玉」自体を分析して先を行けば裏を掻いて儲けることが可能になる。だとしたら自分が「見せ」を行わなくても他人のを利用すればよさそうなものだが、ついつい危険を冒しても自分で仕掛けたくなるのであろう。成功すればどれほど痛快な行為であるかは想像に難くない。
このような事情を考えればこれを改善することは無用な行為であると考える。証券会社が「見せ玉」に対するキャンセル料を取るようにすることは、証券会社にとって明らかに不利益を被ることだからだ。つまり積極的な株価操作を試みる存在がいなくなってしまい、株式取引自体が減少してしまうのは明らかである。つまりこの件に関しては証券会社はむしろ共犯の関係にある。この状況を本気で改善しようなどとは考えていないはずである。
もしこの状況を改善しようと考える存在がいるとしたら、それは「業績良好な上場株式会社」であるだろう。このような存在にとっては、株式市場においてこのような株式操作が原因で自社の株価が乱高下することは決して好ましいことではない。しかしこれに対策するのは簡単であると考える。つまり安定株主を養成して配当目当てに株を買ってもらった上で、上記の「見せ玉」を見破るシステムを提供すれば良い。
このようにすれば見せ掛けの株式操作の罠に掛かることが少なくなり、安定株主の利益を守ることができるであろう。まあこのようなことは既に実行されているかもしれないので、事情通には笑われてしまうかもしれないが、そのような場合には株を買ったことのない人間の思いつきであるのでご容赦頂きたい。将来株を買うかどうかはわからないが、このような「リスク管理の経験」については関心があるので、株式市場の金言でも集めてみようかと考えている。以上