森昭雄・著「ゲーム脳の恐怖」(NHK出版生活人新書)の存在を知ったのは2年前、丁度サイトで「えらいこっちゃ!」を書くため児ポ法や青少年有害社会環境対策基本法案などの事を調べていた頃だった。
最初の頃は「なんだ随分トンデモと言うか、ハッタリだけの本だな…放っておこう」と思っていた。しかし、森昭雄が虚名を売りふんぞり返っている今となっては、それはよからぬ態度であったと思う(とは言え、当時は表現規制問題で色々動いていたためいっぱいいっぱいだったのも事実だか)。
既にゲイムマン氏による、と学会会長山本弘氏や精神科医斉藤環医師へのインタビューによって「ゲーム脳の恐怖」への反証は充分行われ、CESAにより「ゲーム脳」と言う脳の状態は、科学的に立証されたと言えないと言う調査結果が発表された。それらを踏まえて尚、この件に対し発言するのは、第一に森昭雄の尻馬に乗りゲーマーを罵倒する有象無象が鬱陶しく、そのせいで溜まったストレス解消のためである。拙文により有象無象どもが泣きを見る日が一日でも早く近づくといいが…。
さて、まず私が感じた森昭雄とその立論の問題点は以下の通り。
・「ゲーム脳の恐怖」まえがきがコスプレに対する攻撃から始まったように、森昭雄はゲームやサブカルチャーに対し、悪い方向にバイアスがかかっていること。
・既に多くの方たちが指摘しているように、「ゲーム脳の恐怖」の内容には深刻な間違いがあること(アルファ波は必ずしも「異常な脳波」と言うわけではない。また、被験者からゲーム中に検出された脳波は異常値と言うほどのものでもなく、脳波検査の方法や機器の性能も疑わしい)。
・上記の理由により「ゲームを遊ぶ上でのリスクコントロールを勧める」内容になっておらず、ゲームやITへの敵意・憎悪を煽る本になっている事。
二番目の問題は山本弘氏や斉藤医師にお任せするとして、一番目と三番目について書いていこう(両方同じことなんだけれど)。
まず今日言われる「コスプレ」ってのは海外のSF・コミック関係のコンベンションにおけるマスカレードが国内の同種イベントに輸入され、そこから派生したと見るべきか。そういう歴史を考えれば、コスプレがさもゲームに洗脳された故の奇行と言わんばかりの森昭雄発言には糞腹が立つ(マスカレードとは別に、宴の余興に仮装と言うのが昔の日本でも珍しくない事だし)。大体森昭雄が見た「ゲームショーでエンジェルの格好した女の子」ってのも、コスプレイヤーなのかメーカーのブースでゲームをフィーチャーした衣装を着ていたコンパニオンなのか文章だけではわからんし。
コスプレ見つけただけで、日本の将来を憂えるとは心配性な学者だこと…。
「ゲーム脳の恐怖」の論調で思い出すのは、明治時代の「野球害毒論」(拙文
「えらいこっちゃ!」参照)における一番トンデモな理屈。
「野球のボールを手で受けると、衝撃が脳に伝わりバカになる。このように野球の害毒は生理学的にも証明できる。」
これはのちに野球解説者や大洋松竹ロビンズ(現・横浜ベイスターズ)の監督を勤める事になる小西得郎が、子供の頃父親から言われた小言。どうもそういう主張をしていた学者がいたようで…「ゲーム脳」ならぬ「野球脳」かよ。
現代においては少なくとも、小西得郎の父親と同じような主張が額面どおり受け止められることはまずない。野球の「益」の部分を認める者が多い事と、スポーツドクターの存在、そしてリトルリーグにおいては無理な投球を禁止するなど成長期の子ども達の身体に見合ったルールが作られ、リスクコントロールと言うものを考えた野球の楽しみ方が確立しているからだ。(続く)

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