ベンチャー企業に投資した個人が所得税及び住民税に関して税法上のメリットを受ける制度として「エンジェル税制」があります。
メリットは投資時点で1つ、売却時点で2つあります。
(1)投資時点:投資した金額だけ課税を繰り延べる(所得税のみ対象)
例:今年の課税される株式譲渡による売却益が300万円あり、ベンチャーへ200万円投資した場合
・本来⇒300万に対して課税
・メリット⇒(300-200)=100万円に対して課税が行われる。
(2)売却時点:利益が発生した場合
譲渡益を1/2に圧縮して課税(所得税及び住民税が対象)
例:売却による利益が800万円(譲渡価額1000万円、取得価額200万円)の場合
⇒ 800÷2=400万円が課税対象となる
(3)売却時点:損失が発生した場合
損失の翌年以降3年間繰越控除(所得税及び住民税が対象)
例:200万円をベンチャーに投資したが企業が破綻した場合
200万を翌年以降に発生する株式譲渡益と相殺可能(他の所得との通算はできない)
このようにメリットが多いエンジェル税制ですが、この税制の対象となるベンチャー企業の条件は次のように細かく定められています。
@ 設立10年未満の中小企業者であること
A 新たな事業を実施するために売上高の一定割合の費用を支出している企業であること
B外部からの投資を投資時点で1/6以上取り入れている会社であること
C 大規模会社の子会社でないこと
D 未上場の株式会社であること
E 風俗営業等を行っていないこと
@、C、D及びEは大抵クリアできますが、問題となるのはAとBでしょう。
特にAについては次のように規定されています。
・ 研究開発費や市場開拓のための宣伝費・マーケティング調査費など新たな事業を実施するために特に必要な費用※の売上高に占める割合が3%以上(設立5年以上10年未満の企業にあっては5%以上)。
・ 設立1年未満の企業(設立時の払込の場合を含む。)の場合は、常 勤の研究者数の常勤社員総数に占める割合が1/10以上かつ2名以上
※財務諸表に研究開発費等が計上されていない場合は、当該費用に関する領収書、元帳、確定申告書別表十六(五)等を経済産業局等に提出ください。
つまり、研究開発費、市場開拓のための宣伝費、マーケティング調査費など新しい事業を行うために必要な費用が財務諸表や元帳、領収書などに記載されていて、その費用が年間の売上高の3%あるいは5%以上でなければいけないということです。(研究者の従事者数については検討の余地が無いベンチャーが多いでしょう)
新しい事業をスタートするための費用で研究開発や宣伝、マーケティングなどの費用であれば良いので事業計画の中で最初からその予算枠を決めておく必要があると思います。
ベンチャーキャピタルなどが投資事業有限責任組合を組成してベンチャーへ投資するケースでは、組合を構成する組合員が個人の場合にはこのエンジェル税制の適用を受けることが可能です。
またエンジェルは個人が多いのでエンジェル税制の適用がないよりもあったほうが良いに決まっています。
この制度を利用するには事前の予算計画と資本政策が最も大事と言えるでしょう。
投稿者: あすか税理士法人/公認会計士・税理士谷本治郎
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