今の国会における重要課題といえば、年金問題に道路問題などが挙がりそうですが、その影でこんな請願が民主党議員からなされたそうです。その内容は、至極単純にまとめると「
美少女ゲーム・アニメによって人間の心が破壊されるから規制すべし」というもの。
あながち間違ったまとめ方ではないと思うのですが、これでは流石に乱暴なので以下に詳細を引用します。
街中に氾濫(はんらん)している美少女アダルトアニメ雑誌やゲームは、小学生の少女をイメージしているものが多く、このようなゲームに誘われた青少年の多くは知らず知らずのうちに心を破壊され、人間性を失っており、既に幼い少女が連れ去られ殺害される事件が起きている。これらにより、幼い少女たちを危険に晒(さら)す社会をつくり出していることは明らかで、表現の自由以前の問題である。社会倫理を持ち合わせていない企業利潤追求のみのために、幼い少女を危険に晒している商品を規制するため、罰則を伴った法律の制定を急ぐ必要がある。
ついては、美少女アダルトアニメ雑誌及び、美少女アダルトアニメシミュレーションゲーム製造及び販売規制の罰則を伴った法律を制定されたい。http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/seigan/current/2525.htmより引用
この方々がおっしゃるところの「美少女アダルトアニメ雑誌やゲーム」なるものがどんなものか、いせやんにはよく分かりませんし、それを取り巻く状況についても分かりません。しかし、そんないせやんから見てもきになるのが
「
このようなゲームに誘われた青少年の多くは知らず知らずのうちに心を破壊され、人間性を失っており、既に幼い少女が連れ去られ殺害される事件が起きている。これらにより、幼い少女たちを危険に晒(さら)す社会をつくり出していることは明らかで」
という部分。部分と言いながら、半分以上を引用している気もしますがしますが。
さらっと言ってはいますが、この部分は、この請願の正当性を支えるうえで非常に重要な一節(というには長いですね)のはずです。原文を見ていただければ分かるように、この部分で「美少女ゲームによって人間性が破壊され、少女が危険にされされる社会になっている」からこそ「表現の自由以前の問題である」と、この方達は主張していますし、だからこそ「規制が必要」とつながっています。
さて、その重要な一節ですが、冷静に解体してみると、おかしな内容、おかしな構造になっていることに気が付きます。
まずは一文目。前半部で、このようなゲーム(美少女ゲーム)に誘われた青少年は知らず知らずのうちに心を破壊されているとしています。この「心を破壊される」という部分の意味が、まず分からない。率直に解釈すれば「何かの精神病になる」というようなことなのでしょうが、そのような話は聞いたことがありません。「熱中しすぎている」という状態をこの方が「心を破壊された状態」と呼んでいるのかもしれません。しかしそれでは、いつぞやかに流行った「ゲーム脳」と同じく、一般性を欠いた単なる感想の域を出ないものと言わざるを得ません。
つまり、この「心を破壊され」という件は、この請願を正当化する根拠にならないということになりますね。
だとすると、この請願の根拠はなんでしょうか。そう考えて第一段落の終わりを見ると「幼い少女を危険に晒している商品を規制するため」とあります。それを念頭に抜粋した部分の二文目を見てみましょう。すると
「
これらにより、幼い少女たちを危険に晒(さら)す社会をつくり出していることは明らかで」
とあります。なるほど、少女を危険に晒す社会をつくり出すようなものは規制すべきでしょう。しかし、ここに問題がありますよね。
この請願では美少女ゲームが犯罪を誘発するという主張はあっても、その根拠が全く示されていないんですよ。
「これらにより、幼い少女を(以下略)」などという文句も、「これら」の指示内容である「美少女ゲームにより人間性が破壊される」という主張に根拠がないのでは、むなしく響くばかりです。
要するに、この請願は「
美少女ゲームが気に入らない。なんとなく有害っぽい。だから規制して」という、稚拙な「お願い」に過ぎないわけです。
さて、今回の例は、この日本の中でもかなりマイナーな分野に関して、無名の議員二人が的外れな請願を行なった、というだけのことでした。しかし、本当にこれは美少女ゲームだけの問題なのでしょうか。一介の中学生の、いせやんから見ても、どうも日本の政治事態が「なんとなく○○。だから□□する(しよう)」で動いているような気がします。
それこそ、昨今のテレビをにぎわしている年金制度。この制度自体が人口の増加を前提にしており、そんな制度がいつまでも成立するはずがありません。にも関わらず、この国は数十年にも渡って「なんとなく、この制度が国民にウケるっぽい。だから続ける」と言ってきたわけです。ヨーロッパの先進国なんかは80年代には人口が減少に転じた国も少なくありませんから、いずれどうなるかは海外に学べたはずなのに、です。
最後に「なんとなく」で国を運営し続けて、洒落にならない事態に陥った国を紹介します。南太平洋の島国ナウルは肥料となるリン鉱石が豊富であり、鉱石が枯渇した90年代まで、政府はリンの輸出で得た利益を国民に無償で分配するという、とんでもない政策を行なっていました。その結果、リン鉱石が枯渇した今ではナウルの失業率は90%に上り、国内には企業と呼べるものが存在しないという状況に陥っているそうです。「なんとなく楽したい。だから貿易黒字は皆で好き勝手に使おう」という政策の結果です。