あっという間に一ヶ月が経ってしまいました。早いですねぇ・・・
私のベンは基本線は全く変わらないのですが、部分部分で初日とはまるで別人になったり、逆に稽古場のある日へと戻ったり、色々と試行錯誤しているようです。
時には明確な意図を持ってやっていますが、おおむね、そのとき「感じた通り動いている」、そんなベンです。
若いころ、共演している先輩俳優達の中で、魅力的な方の演技は日々変化していき、初日と千秋楽ではまるで違ったりしました。
逆にあまり魅力を感じない方は初日も千秋楽も、というか本読みの日からまるで変わりませんでした。
舞台というのは相手役の空気も変われば、その日のお客さんも変わります。
その時に生まれたものを、「決めた演技」で押さえ込むのは間違いなのかもしれません。
昔、とある演出家に言われました。
舞台の上で生きろ!
まさに目指すところですね。
マキシム役、山口祐一郎さんと初めての共演は今から十年以上も昔、「オペラ座の怪人」です。
劇団に入団してから「美女と野獣」稽古に入るまで、私にはまだ「ピーターパン」の巡業が残っていました。
次の巡業まで一ヶ月ほどあいた、ある日のことです。
「どうだ、少し稼いでみるか?」
あざみ野の稽古場へ行くと浅利先生がおっしゃいます。
「は!?」
なんのことやら分からず、私は聞き返しました。
「『オペラ座の怪人』が大阪で開く・・・」
「はい・・・」
「出るか?」
「ええっ!?」
あの名作にわたしが!?
「ブケーという役だが・・・やってみるか」
「あ、ありがとうございます!!」
「よし」
「で、先生、いつですか?」
「来週だ」
「ありがとうござ・・・ら、らいしゅう!!!???」
というわけで、天下の「オペラ座の怪人」に5日で出たのです。
そりゃ、必死なんてもんじゃありませんわな・・・
異常なほどの集中力・・・人間、やってやれないもんはありませんね。
浅利先生、チャンスをありがとうございました!
その時の怪人が祐さんでした。
それは怪しくて、妖しくて、本当に素晴らしかったですよ!
アトリエと呼ばれる巨大な稽古場に祐さんはいました。
クリスティーヌを鏡の向こうへ呼び寄せるシーンです。
鏡の向こうから祐さんは「エンジェル・オブ・ミュージック」を歌うヒロインをじっと見つめています。
その立ち位置は客席からは見えていないはずです。
客に見えない位置でも、祐さんは気持ちを作って準備しているのです。
それはすごい、誰も近寄れないほどの集中力でした。
今、わたしはクリエのとある場所から舞台上の祐さん、いや、マキシムを見ています。
そこは客席からは見えない場所です。
そこでしっかり準備してから登場するのです。
お客様には見えないところから演技を始める・・・
十数年という長い時間の流れの中、とある演出家に出番をもらい、そして、とある共演者から教わった・・・そんな長い長い歴史のやり方なのです。
巡り巡って自分に返る。
ふしぎなもんですね。
この「レベッカ」から十年たって・・・
わたしは一体どんな自分と巡り会うのでしょう・・・
「ニャントム・オブ・ジ・オペラ」
