僕はSF小説が大好きなんですが、
「一番好きなSF小説は?」
と、聞かれたら19世紀末に書かれた「宇宙戦争」と答えます。
今まで2回映画化されてますが、時代設定もストーリーも異なります。
ちなみにSFファンで、ベストワンに「宇宙戦争」を挙げる人はほとんどいません。
あまたの名作達を追い抜いて、僕がこのレトロSFである「宇宙戦争」をベストワンに挙げる理由は、半端じゃない「リアリティ」です。
「え?! どこリアルなんだよ!」
と言いたい人の気持ちも良く分かります。
だって、
「タコ型火星人が巨大メカに乗って地球侵略に来るだけの話」
ですから。
実はこの本が書かれた時代でも、火星に文明があるという話は、学者の間では現実味はありませんでした。
しかし! 火星に文明があろうが、なかろうが、侵略者がイカだろうがカエルだろうが別に良いのです。
有り得ない馬鹿げた出来事を、できるだけリアルに見せる。
これが僕がSFに一番強く求めている要素です。
そして「宇宙戦争」のリアリティは100年を経てなお色あせていません。
作者のウェルズは歴史学者でもあり、文明の興亡に造詣が深く、人間の観察眼にも優れています。
本書はそんな学者が、
「世界一の大国「イギリス」に、人類より遥かに進んだ文明が攻めて来たら?」
をシミュレートし、人間とは何かを真剣に問いかけた小説なのです。
例えば、主人公は火星人の熱戦攻撃を目の当たりにし、命からがら逃げ帰りますが、家に戻ると
「大砲を一発ぶちこめば奴らはみんな殺されてしまうさ」
と安心しきってしまいます。
人間には本当の危機から目を背ける心理があり、 戦争を始める前に敵を見くびってしまう。
今も昔も変わらない人間の姿がさらっと描かれます。
戦争SFとしてもウェルズの予言はビシバシ当たっています。
・戦闘機械が戦争の主力兵器になる
……戦車が発明され、陸戦の主力となった。
・毒ガスが使用される
……第一次大戦でその悪夢は現実になった。
・戦闘機械による高速度侵攻が行れる
……第二次大戦でドイツが行った「電撃戦」である。
・熱線砲が使用される
……試作兵器は20世紀中に完成済み。
実のところ、戦闘機械や熱戦砲、毒ガスがウェルズ独自の発想かどうかは不勉強で分からないのですが、「宇宙戦争」が数十年先の戦争を予言していたのは確かです。
たぶん「未来の戦争はこうなるはず」というつもりで書いたわけじゃなくて、「未来の戦争はこうなって欲しくない」という最悪の光景を書いたんじゃないでしょうか。
あ、肝心な事を書き忘れるところだった。
侵略SFの燃えどころはしっかり押さえてます。
新聞の見出し続出! 逃げ惑う群集! 軍隊との攻防!
おそらくこの小説が、後の怪獣映画や、侵略映画の演出のルーツではないかと思われます。
僕が最も燃えるのは、(当時の)地球人類が誇る、最新最強兵器「装甲艦」と侵略メカとの巨大メカ同士の戦い!
しかし、その後、超兵器同士の戦争も現実のものとなり、おびただしい死者が出ている事を考えると、燃えてばかりはいられません
そして、
「戦争は人のロマンをかきたてる」
という心理も、ロマンの代償も、この小説は冷徹に描いています。

2