雪をかぶった山の稜線。
一人。
(ここまでもこれからも人の気配はゼロ、足跡は動物のものだけ)
戻るにも戻れない、進めるかどうかわからない。
町は遥か遥か彼方に見える程度。助けは絶対に呼べません。自分で解決するしかないのです。自分の力で切り開くしかありません。
以前登山家としてヒマラヤ山脈の7000m級の山を世界で初めて初登頂した方に言われたことがあります。
”本当の山の経験が必要なのではないか”
これまでのレースでも何度も襲ってきた感情。
”恐怖”
もうだめなんじゃないかという自己否定。これを乗り越えるにはどうしたらいいのかその答えを探して、約5年。
やっぱり誰の助けも借りることができないのです。自分で乗り越えるしかないのです。
恐怖から逃げるのではなく、じたばた抵抗しないで、じっとその恐怖を見つめる。するとすーっと心と体の緊張が取れ、力が抜けて、体の中から別の力がじっくりと沸いてくる。
そう、すべては外ではなく、中にあるのです。心の中に。
今回、この恐怖をきっかけに心と体のこわばりが解け、自然と一体になることができました。おっきな山に抱かれた感覚。抱きつけば包み込んでくれる、そんな感覚。
1時半ごろ、中ノ岳の非難小屋に到着。
ここで再び心と体に聞きました。
”戻るか、進むか”
後ろを振り返れば、
雪に覆われた一見、美しいトレイル。
”登りで滑りそうで、トレイルに抱きつきながら登ってきたところを果たして下ることができるか”
すぐ心と体が動きました。
前に進みました。
八海山へ。
非難小屋脇から八海山へトレイルが伸びています。雪に覆われていましたが地図で等高線や登山道の方角を確認し、カーボショッツを補給しすぐに動きました。
ここから沢のところまではトレイルがボブスレーコースのようにえぐれていたので滑ってやりました。もうすぐ冬(スキー)ですからね♪
沢で思いっきり冷たい雪解け水を口に含み前を見ると、そこには土と岩のトレイル。雪はほとんどありません。
右に
駒ヶ岳、
前方に八海山、左は足元に壁。しばらくして関門ノ滝というこれまたでっかいでっかい滝。山のこちらと向こう側。何もないとは言え直線でも数キロあるにもかかわらずゴーゴーと水が落ちる音が聞こえ、雄たけび。
恐怖をきっかけによりリラックスした心と体。体が動くように、心が許すように、前へ前へ、マイペースで進みました。
この辺りも腰から胸あたりの段差、鎖場が幾度となく。でももう雪はありません。温かい日差し。ほんとうに気持ちいい。冷静に、かつ、体が動く限りのスピード、ペースでどんどん進みました。
荒山山頂(たぶん)で、初めて足元の案内に八海山の字を目にし、雄たけび。
見覚えのある山の形。どんどん八海山が近づいてきました。
入道岳山頂についたとき、目と鼻の先には岩場の八峰。初めて里が足元に見えました。奥には見慣れたスキー場のロープーウェイ。音も聞こえました。もちろん、雄たけび。
岩場下の迂回路近くまできて初めて人の足跡。うれしかった。
4時ごろ、何度も何度も来たことがある、千本檜小屋に到着。もうホームに帰ってきたも同然。とはいえもちろん気を引き締めながら、夕日の中をどんどん下ります。
途中の水場で水を飲みましたがもうさっきの雪解け水の冷たさではありませんでした。帰ってきたのです。
4時半ごろ、スキー場手前で、大倉口への分岐に到着。さあ後は本当に下るだけです。ヘッドライトを頭につけ、座って補給をし、冷静に、でも気合をいれて雄たけび。
ここからは常に雄たけび。森が次第に暗くなってきて、さまざまな動物(!)に自分の存在をアピールしながら進みました。
雄たけびというより奇声をあげながら、徐々に里の光が近づいてきました。車のヘッドライトも見えてきました。もう少し。
神社の境内に入ったのか、お墓。その横を通り抜け、まっくらな杉林を通り抜け、一つの街頭が見えてきました。その横に鳥居。もちろん、雄たけび。
やりました。ついに里まで戻ってきました。5時過ぎ。
妻kanaに無事山から下りたことを連絡。
すぐにそこから自転車を取りに水無川沿いを上流へ走りました。30分もしないうちに自転車を置いた公園に到着。特大の雄たけび(動物がいるかもしれませんからねってトレイルランナーが一番動物か・・・)
行きに飲まなかった湧き水を自分へのご褒美として、そしてここから小千谷まで自転車に乗るために補給。
1時間半後。
7時半ごろ。ついに小千谷の自宅へ。ほんとうにやりました。ちょっとウルウル。(雄たけびはありません(笑)、町ですから、もちろん)
家を自転車でこぎ出し11時間30分後。ついに無事に帰ってきました。
やりました。
長い間戦ってきた、恐怖を、味方につけました、ついに・・・
(トレイルランナーは初雪直後のこの時期に行きましたが、絶対に、お勧めはしません。あくまでも自己責任でお願いします。)
<kanaのおすすめ♪>


暑すぎないダウンはこれからの季節にオススメ♪今年はかわいい色が多いなあ〜☆