METライブビューイング『ルイザ・ミラー』  オペラ関係

今日は、雨の銀座へ。

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METライブビューイングを観るためですが、

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その前の所用が長引いて、遅刻。
その上、新橋から乗った都営線が
特別快速で、東銀座、宝町に止まらず、
日本橋まで連れて行かれ、
各駅停車で2つ戻って東銀座へ行き、東劇へ。
予約チケットの機械では、
開映後は受け付けてもらえず、
入り口へ。
1幕目が終わるまでは、後方の席に止め置かれ、
休憩になって初めて自分の席へ。
以前、開演時間に遅れた東京文化会館のオペラで、
同じ経験をしたことがありました。
映画なのに、オペラ並。

今日の演目は、
ヴェルディ「ルイザ・ミラー」

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ヴェルディ14番目のオペラで、
中期の充実を示す最初の作品と言われています。
この後、「ナブッコ」「リゴレット」「トロヴァトーレ」「椿姫」
とヒット作を連発します。

フリードリヒ・フォン・シラーの戯曲「たくらみと恋」を原作とし、
サルヴァトーレ・カンマラーノの台本で、
1849年12月8日、ナポリのサン・カルロ劇場で初演。

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世紀前半のチロル。
退役軍人ミラーの娘ルイザは、
相手の正体を知らぬまま、
領主ヴァルター伯爵の息子ロドルフォと恋に落ちていた。

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息子の地位を万全にしたい伯爵は、
ロドルフォを裕福な未亡人フェデリーカと結婚させようとするが、
恋人ルイザの存在を打ち明けられ、
怒った伯爵はルイザを侮辱し、
刃向かったルイザの父ミラーは投獄される。

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ルイザに横恋慕する伯爵の腹心ヴルムは、
ミラーを助けたいなら、
愛していないという手紙をロドルフォに書けとルイザに迫る。
泣く泣く従ったルイザだが、
彼女の心を誤解したロドルフォは、
彼女に毒を飲ませ、自分も飲む。
死の直前に真実を彼女の口から聞いたロドルフォは、
全ての元凶であるヴルムを刺し殺し、
伯爵に「あなたの罪だ」と言って倒れ込む。

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という、オペラらしい、
作ったような話。

それが、ヴェルディの音楽が付くと、
俄然ドラマチックな舞台になります。
本当に、ヴェルディ、好きです。

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しかし、ロドルフォは間抜けだね。
私は、「椿姫」のアルフレードとオテロとトスカを
「オペラの三大マヌケ」と呼んでいますが、
もう一人付け加えたくなるようなロドルフォ。

指揮は、予定されていたジェイムズ・レヴァインはやはり出ず、
ベルトラン・ド・ビリー
ヴェルディが合ってるみたい。
演出はエライジャ・モシンスキー

ルイザ・ミラーはソニア・ヨンチェヴァ

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ロドルフォはピョートル・ベチャワ

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ルイザの父はプラシド・ドミンゴ
バリトンの声域で演じます。

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リハーサル映像は、↓をクリック。

https://youtu.be/SYVCna6pbbw

https://youtu.be/mo6lJt9bUIg

来シーズンのライブビューイングのスケジュールが発表されました。

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新演出が3本、MET初演が1本。

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MET初演の「マーニー」は、
ウィンストン・グレアムの原作で、
ヒッチコックによって映画化されたことがあります。


オペラ『セミラーミデ』  オペラ関係

今日は、昼前から銀座に出て、
ここ、東劇

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METライブビューイング

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今日の演目は、
ロッシーニ「セミラーミデ」

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25年ぶりの再演です。
なぜ25年も上演が途絶えていたかというと、
主要登場人物全てに、
特別高度な技巧と圧倒的な歌唱力が必要とされるが故に、
なかなか揃えることができなかったのだといいます。

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「セミラーミデ」は、ロッシーニが
ヴォルテールの悲劇『セミラミス』を基に、
1823年に作曲したオペラ。
ロッシーニのイタリア時代最後の作品で、
同年2月3日、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場で初演されました。

歌唱技術の難しさから、
20世紀前半には上演されることがありませんでした。
この作品の20世紀初演は
1962年にミラノのスカラ座。
しかし、このときに使われたのは
リピート部分などが削除された縮小版だったため、
本格的な全曲演奏が行われたのは
1990年12月、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で。
今回は、この時の演出そのままの上演です。
演出はジョン・コプリー
舞台装置や人間の配置や動きに多少古めかしさを感じるのは、そのため。

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物語は、古代バビロニアを舞台に、
王権の継承を巡る権謀術数の陰謀劇。
しかも、15年前に先王ニーノを殺したのは、
その妻の女王セミラーミデで、
アッシリアの王子アッスールにそそのかされて実行。
そのため、次の王に自分を指名するようアッスールに迫られています。
そこに登場したのは、若い武将アルサーチェ。
セミラーミデは、彼を夫に迎えて王位を継がせようと考えていますが、
そのアルサーチェこそ、行方不明となった息子のニニアであったことが判明します。
そして、王権を巡る争いと復讐の実行が行われるのですが・・・

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ロッシーニは相当力を入れて作曲し、
華麗なメロディーが炸裂します。
そして、歌唱陣が超絶技巧を発揮。
音符がいくつ連なっているのか、
と思うような速いフレーズを
驚異的な技術と正確な発声で描きます。
なるほど25年も再演がかなわなかったのも仕方なかったかと納得。

特に、セミラーミデを演ずるアンジェラ・ミード

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アッスールを演ずるイルダール・アブドラザコフ

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バール神の大祭司長オローエを演ずるライアン・スピード・グリーン

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らの歌唱が光ります。
いつもながら、合唱も素晴らしい。

入り組んだ話なので、
前半、ちょっとうとうとした途端、
人間関係が分からなくなってしまいました。
オペラに睡眠は禁物。

指揮者マウリツィオ・ベニーニ
冒頭、長い序曲の間、
METの優秀なオーケストラの面々の
演奏する姿が見られます。

リハーサル映像は、↓をクリック。

https://youtu.be/c_nBY7k6Tt8

超絶技巧がどのようなものか、ご覧ください。


METライブビューイング『トスカ』  オペラ関係

今日は、夕方から銀座に出て、
東劇へ。

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METライブビューイングです。

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今回は初めてムビチケの回数券を購入。

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1作品3600円のところ、
3作品セットで9300円。
つまり、1作品3100円とお得。
紙の回数券もあるのですが、
ムビチケはネットで座席の指定が出来ます。

裏面の隠された部分を10円玉でこすって、
暗証番号を出し、

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10桁の購入番号と共に暗証番号を入力して予約。

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映画の前売りムビチケと同じですが、
映画の方はシニア割引があるので、
前売り券を買う必要がなく、
今回、初めてムビチケを購入してみました。

さて、今日の作品は、
今シーズン4作目の「トスカ」

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プッチーニによる人気作品。
「オペラの中のオペラ」という人もいるくらいです。
今さらストーリーを書くのもはばからわれるので、省略しますが、
今回は、新演出

この作品はMETでは、
大演出家フランコ・ゼッフィレッリによる舞台が
25年もの長きにわたり愛されてきましたが、
2009年にリュック・ボンディ演出によるプロダクションに変更。
私は面白いと思いましたが、
一部の聴衆には不評だったようで、
わずか8年で新たな演出に。
このリュック・ボンディという人、
幕間インタビューで
ゼッフィレッリのことを軽んじる発言をしたりして、
反発されたらしい。

そこで、今回、METで多くの舞台を成功させた人気演出家の
デイヴィッド・マクヴィカー
新しく手掛けることになった際、
ピーター・ゲルブ総裁から
「美しい舞台を」と要請されたそうです。
確かに、ボンディ演出は、
第2幕に胸もあらわな娼婦を登場させたり、
教会の中にも胸を露出した絵をかかげたり、
ちょっと下品、な感じがしたことは確かです。

マクヴィカー演出は、
1幕には今もローマに現存する
聖アンドレア・ヴァッレ教会の聖堂を
そっくり再現し、
第2幕のファルネーゼ宮殿(現フランス大使館)、
第3幕のサンタンジェロ城も
本物と見まがうほど絢爛豪華に再現。

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この装置は「ゼッフィレッリへのオマージュ」といわれています。

年間プログラムが発表されてから難産で、
幕開け寸前までに
指揮者と3人の主要キャストがすべて変更に。
しかし、それが良い方向に転がったようで、
トスカ役のソニア・ヨンチェヴァ、
カヴァラドッシ役のヴィットーリオ・グリゴーロは、
初役ながら、
素晴らしく演じてくれました。

ソニア・ヨンチェヴァは、
美人なので、
前公演の不美人トスカで、
想像力で補うことを強制させずに済み、
歌も素晴らしい。

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第2幕の「歌に生き、恋に生き」は、
まさに聴衆の拍手喝采を受けました。

ヴィットーリオ・グリゴーロも新鮮で、
第3幕、死刑執行の前に神父を呼ぶかと言われて、
それはいいが、愛する人を残しているので、
その人への手紙を届けてほしい、
と歌う場面で、
あ、と胸を突かれました。
その後のアリア「星は光りぬ」も素晴らしく、
こんな全身から悲しみをほとばしたものは初めて聴きました。
前に観たドミンゴ以上。
この場面でついに落涙
まだオペラを観て泣くだけの感性が残っていたんだ、
と自分でも驚きました。
13歳の時、
パヴァロッティ主演の「トスカ」で羊飼いの少年役を歌って以来、
カヴァラドッシ役を歌うのを夢見ていたといいいますから、
夢の実現を成功で終わらせました。

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開幕間際になって、
急遽代役でスカルピアを歌ったジェリコ・ルチッチ
この役をすっかり手中に収めた大ベテランで、
厚みと深みのあるスカルピアを演じます。

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今回も合唱が冴え渡り、
第2幕の舞台の外から聞こえて来る
カンタータが素晴らしい効果を生みます。

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3人の歌手に支えられて、
この新演出版、
観てよかった、と思わせられた
冬の夜でした。
やっぱり、プッチーニはいい。

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動画は、それぞれ↓をクリック。

「歌に生き、恋に生き」

二重唱

予告編

このブログでの過去の感想は、↓をクリック。

2009年リュック・ボンディ版

2013年の再演

2009年新国立劇場版

あれ、確かフィレンツェ歌劇場の来日公演も観たはずだが、
と思ってブログを探すと、
どこにもありません。
どうやら、2011年3月の東日本大震災の直後だったため、
掲載を遠慮したようです。


バナナジュースと『イドメネオ』  オペラ関係

今日は、昼過ぎ、東銀座へ。
予定より早く着いたので、
以前から気になっていたお店に行ってみました。

行列が出来ています。

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仕方なく、並びます。

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何のお店かというと、
バナナジュースの専門店

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アバウト12時オープン。
バナナがなくなり次第閉店
早くて午後3時には閉まってしまいます。

このお店、バナナが完熟していないと、
店を開けない
ので、有名です。

開いているかどうかは、
オーナー店主のツイッターでの
↓のようなつぶやきを見るしかありません。

バナナが完熟にならないので、
今日はお休みさせていただきます。

ギリギリまで悩みましたが、
やはり甘味が足りないので、
本日もお休みさせて いただきます。
明日は甘くなりそうなので無事に営業出来そうです。

本日は完熟バナナの数が少なくて、
早々売り切れになってしまいました。

またバナナが熟しません。
申し訳ございません。
本日もお休みさせていただきます。

最近いつものバナナの数が思うように入荷せず、
入荷したバナナもすごい緑色で、
完熟になるまで時間がかかっています。
ご迷惑をおかけして申し訳ございません。

新しい仕入れ先が決まりました。
来週から少し長くお店を開けていられそうです。

事実、前回来た時には、
閉店していました。

今日は開いててラッキーです。

メニューは↓のとおり。

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列が前に進んで、
やっと中が見えるようになりました。

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一人が代金を受け取り、
一人が一心不乱にミキサーを操作します。

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15分ほど待って、ゲットしました。

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飲んでみると、確かに、おいしい。
これで230円は安い。

お店の所在地は、
歌舞伎座の向かって右の道をまっすぐ行って、
道路を一つ越えた右側。
住所は中央区銀座3−14−19。

一度、行ってみて下さい。


さて、目的地は東劇の
METライブビューイング

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今日の演目は、
モーツァルト「イドメネオ」

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モーツァルト24歳(!)の作品。

1780年、ザルツブルクにいたモーツァルトは、
ミュンヘンのバイエルン選帝侯カール・テオドールの宮廷から
謝肉祭で上演するオペラの依頼を受けました。

モーツァルトは11月にミュンヘンに赴き、
歌手に稽古をつけながら作曲を進め、
翌年1月29日にミュンヘンのレジデンツ劇場で初演されました。

モーツァルトの最初の充実したオペラ・セリアとなりました。

オペラ・セリア・・・
セリア、つまりシリアス。
ギリシャ神話や英雄、王の活躍などを題材とした
格調高いイタリア・オペラ。
17世紀末から19世紀はじめ頃まで書かれた。


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トロイア戦争後のクレタ島を舞台とした3幕のオペラ。

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戦争に出陣した国王イドメネオは、
帰路の海で嵐に巻き込まれ、
命と引き換えに、
上陸して初めて出会った人間を生贄に捧げると
海神ネプチューンに約束する。

クレタ島に帰り着いたイドメネオが出会ったのは、
なんと息子のイダマンテだった。
イドメネオはイダマンテを亡命させようとするが、
イドメネオの裏切りに激怒した海神は怪物を送り込む。
次々と襲う天災に、窮地に立たされたイドメネオは…。

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という王の苦悩と共に、
王子イダマンテと
トロイア王の娘イリアと
アルゴス王の娘エレットラの
三角関係がからむ。

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美しいアリアに飾られた3時間の作品。

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イダマンテをズボン役のメゾソプラノが演じましたが、
やはりこれは男性が演じてほしかったところ。
二人の女性の愛を引きつける役なのですから、
イケメンのテノールでないと説得力が出ません。

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指揮はジェイムズ・レヴァインさん。
 
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特別映像で、
若い頃のレヴァインさんの精力的な活動が見られたのはよかった。

それとピンスポットの照明室という、
めったに見れないものも見れました。

なお、
近藤真彦主演の「イダマンテ」(1988)というミュージカルがあり、
先代の猿之助の演出、ということでチケットをゲット。
その日、勤め先から家に帰った時、
妙な違和感を感じると、
引き出しの中にその日の中野サンプラザのチケットを発見。

後にも先にも、
チケットを買っていながら
見なかったのは、それ1回だけです。


↓はMETライブビューイングの来期のラインナップ

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MET初演が2つ、
新演出が3つ。

「皆殺しの天使」は、
ルイス・ブニュエル監督の1962年の映画を
ザルツブルク音楽祭の委嘱で、
トマス・アデスがオペラ化したもの。
2016年7月28日に初演したばかりの新作オペラです。

ところで、
アンナ・ネトレプコもルネ・フレミングも
出演作はありません。
指揮者も含め、
METは世代交代が進んでいるようです。


その後、友人と築地の

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すしざんまいへ。

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社長の像が迎えます。

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「こころ粋」というセット。

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モーツアルトの音楽にひたり、
寿司に舌鼓を打つ。
良い午後でした。


METライブビューイング『ナブッコ』  オペラ関係

さて、昨日の東劇での
METライブビューイング、
ヴェルディ「ナブッコ」

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これについては、
2011年11月に
METで観た時のことがブログに載っていますので、
再録します。

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題材は、イスラエル民族のバビロン捕囚の話。
「ほしゅう」と入力しても「捕囚」と変換しないくらい古い言葉で、
日本人にはなじみがありません。

今で言うユダヤ人は
3回、異郷での生活を味わっており、
1度はヤコブの家族のエジプト移住の時代。
エジプトからカナンへの復帰の話は
映画「十戒」に描かれていますが、
この時、彼らは選民としてのアイデンティティーを確立します。

2度目がこの「バビロン捕囚」で、
北イスラエルと南ユダに分裂したイスラエルが
まず北王国が滅び、続いて南王国が
新バビロニア王国の侵攻で滅ぼされ、
紀元前597年から586年にかけて、
強制的にバビロンに連れ去られる。
その地から故郷への帰還を祈り続けた時期がバビロン捕囚。

3度目は、
紀元後の世界への離散(ディアスポラ)です。

このバビロン捕囚、
民族存亡の時であり、
この時期、彼らは堅固な宗教思想を確立します。
その力になったのが文学で、
バビロン捕囚がなければ、
旧約聖書の詩篇のうるわしい詩のいくつかは生まれていません。
(たとえば
「われらは
バビロンの川のほとりにすわり、
シオンを思い出して涙を流した」
に始まる詩篇第137篇など)
イザヤ書をはじめとする預言文学も出現せず、
まさに民族存亡の危機の時、
香り高い文化が花開く典型です。

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話は戻って、
この作品は、
この史実を扱って作った創作。
エルサレムに侵攻したネブカドネザル王は「ナブッコ」となり、
その娘同士の確執があり、
ナブッコの狂乱があり、
正気に戻って、ユダヤ教に回心し、
イスラエル民族を解放する、
という後半は史実とは違う展開で、
女同士の争いなど、やや通俗的。
まあ、オペラですからね。

この作品は、ヴェルディの最初の成功作で、
それまでの2本のオペラの失敗で自信喪失したヴェルディは、
家庭問題も抱え、絶望のあまり筆を折ろうとまで考えていました。
そこへスカラ座の支配人が
他の作曲家が「作曲に値しない」と
突っ返して来た台本を持って来ます。
ヴェルディはこの台本に霊感を感じて作曲。
しかし、無名の新人作曲家の新作はなかなか上演されず、
ようやく練習が始まると、
オーケストラ奏者、道具方、歌手たちの態度が一変しました。
今まで見たことのない新しいオペラの世界を感じ、
興味は驚嘆に変わります。
人の心を強く掴んで話さない何かがあります。
登場人物は生身の感情を持っており、
こんなに感情をむき出しにして歌うオペラの登場人物は
存在しなかったのです。
ヴェルディの人生観が反映されており、
情感に訴える合唱は、胸を打ちました。

特に、
第3幕で捕囚となったイスラエル民族が川辺で歌う
「行け、わが想いよ、金色の翼に乗って」は
当時オーストリアの支配を受けていた
イタリア人は自らの運命に重ね合わせて魂に響きました。

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1842年3月9日の初演。
ヴェルディは一夜にしてドニゼッティなどと並ぶ
オペラの大作曲家となり、
スカラ座はシーズン終了までに7回の再演をし、
その夏には臨時のシーズンで
「ナブコドノゾール」(その頃の題名)は
57回という記録破りの再演がされ、
またたく間にイタリア全土と
ヨーロッパの歌劇場で上演されるようになりました。

というわけで、
「ナブッコ」がなかったら、
大作曲家ヴェルディはおらず、
「リゴレット」も「アイーダ」も「オテロ」も「椿姫」もなく、
(きりがないので、以下、略)
オペラの歴史は変わってしまいます。

1901年、ヴェルディが87歳で亡くなった時、
故人の遺志により葬儀では一切の音楽演奏が禁じられましたが、
それでも棺が運ばれる早朝、
ミラノの沿道に参集した群衆は、
自然とこの「行け、わが想いよ〜」を歌ったといいます。

その1カ月後、
音楽家のための養老院に
ヴェルディと妻の遺骸が改葬される際には、
30万人の群衆が集まって、
偉大な作曲家夫妻を偲んだといいます。
この時、改めて「行け、わが想いよ〜」が歌われ、
指揮を取ったのは若き日のトスカニーニで、
800人の合唱隊に一般群衆の3万人が唱和した、
と、ものの本には書いてありますが、
その後に、
「イタリアにおけるこの種の伝説は
常に割り引いて考える必要がある」
とも書いてあります。

この歌は、
イタリア人は「第2の国歌」と呼ばれるほど愛しています。

話は戻って、METの「ナブッコ」。
第3幕で舞台が回って、川辺に座る奴隷たちが現れて、

前奏に続き、
「行け、わが想いよ、金色の翼に乗って
行け、山に丘に憩い
そこでは、暖かく柔らかい
祖国の甘いそよ風が薫っている」
と歌い始めた時には、
どっと涙があふれてしまいました。
美しいもの、崇高なものに触れた時の感動の発露は瞬時です。
音があって、空気があって、
振動が伝わって、耳があって、
その音楽の響きが脳に伝わって、感動を生む。
何と素晴らしいことか。
この時ほど、
音楽に対する感性を
親が与えてくれたことに感謝したことはありません。
合唱が終わった時には大喝采の中で頬を濡らし、
ああ、これ一つ聴けたことで、
今回来た甲斐があった、
とつくづく思いました。


まあ、このオペラについての私の感慨は、
上記で言い尽くされていますが、
今回のMETでの上演は、
病気から回復したジェイムズ・レヴァインの指揮で、

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ナブッコをプラシド・ドミンゴが歌う、
というだけで話題沸騰です。
東劇も平日の昼間なのに、混んでいました。

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演出はエライジャ・モシンスキーによる、
2001年からのプロダクション。
生火をふんだんに使う演出。
先に書いたとおり、
私は2011年にこの舞台を観ていますが、
なんだか別の作品のように印象が違います。
私が観た時は、
演奏、歌手共にイマイチだったからでしょうか。

レヴァインは椅子に座っての指揮ですが、
演奏が始まった途端、
「ああ、ヴェルディだ」
とつぶやきたくなるほど。

ドミンゴは76歳。
ご存じ「三大テノール」の一人ですが、
本作ではバリトンを歌います。
元々バリトンから出発した人。
素晴らしい演技力の持ち主ですが、
昔よりも演技の切れが失われたのは、やはりお歳でしょうか。

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アビガイルのリュドミラ・モナスティルスカ

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フェネーナのジェイミー・バートンの二人は、
典型的なソプラノ体形で、
役の雰囲気が出ません。
ザッカーリアのディミトリ・ベロセルスキーは、
素晴らしいバスを響かせます。

しかし、何と言ってもこのオペラのハイライトは、
第3幕第2場で歌われる合唱
「行け、わが想いよ、金色の翼に乗って」
今回も素晴らしい出来で、
アンコールでもう一度歌うほど。
なんだか得した気分です。

歌詞の訳詞を紹介します。

行け、想いよ、金色の翼に乗って
行け、斜面に、丘に憩いつつ
そこでは薫っている。暖かく柔かい
故国の甘いそよ風が!

ヨルダンの河岸に挨拶を、
そして破壊されたシオンの塔にも…
おお、あんなにも美しく、そして失われた我が故郷!
おお、あんなにも懐かしく、そして酷い思い出!

運命を予言する預言者の金色の竪琴よ、
何故黙っている、柳の木に掛けられたまま?
胸の中の思い出に再び火を点けてくれ
過ぎ去った時を語ってくれ!

あるいはエルサレムの運命と同じ
辛い悲嘆の響きをもった悲劇を語れ
あるいは主によって美しい響きが惹き起こされ
それが苦痛に耐える勇気を我々に呼び覚ますように!

この曲の場面を観たい方は、↓をクリック。

https://youtu.be/oPy_HwOtumU

2006年2月26日、
トリノオリンピックの閉会式でもこの合唱が歌われました。

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やっぱり好きだな、ヴェルディ。
堪能した冬の午後でした。





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