『ホテルローヤル』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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先の直木賞受賞作

北海道の片田舎にある一軒のラブホテルに
関わった人々を描く連作短編集。

@シャッターチャンス
スーパーに勤める美幸は、
中学時代の同級生・貴史と
今は廃墟となっている
古いラブホテルを訪れる。
そこでヌード写真を撮り、
写真雑誌に投稿するためだ。
元アイスホッケー選手だった貴史は、
靱帯を損傷して市の臨時職員をつとめたあと、
上司とそりが合わず辞め、
3年前に美幸のスーパーに採用された。
写真に生きがいを見いだし、
「やっと見つけた目標なんだ。
ここからまたスタートなんだ。
もうし挫折したくないんだ」
という男の言葉に、
美幸は服を脱ぐ・・・。

A本日開店
観楽寺の二代目住職の妻・幹子は、
市内のホテルで檀家総代の佐野と会っている。
檀家の何人かは、
寺を支えるためにお布施を出すのと交換に、
住職の妻と関係を結んでいたのだ。
父親が亡くなり、檀家総代を引き継いだ佐野は、
父親からその話を聞き、戸惑いながらも幹子を抱く。
しかし、それは幹子にとって、
「奉仕」ではなく「快楽」と感じられる行為だった。
「お布施」はご本尊の足元に置くのだが、
佐野との関係を見通したのか、
夫の住職はそれを放ったままにしておく。
二度目に佐野と関係した時、
幹子は一つの遺骨を預かる。
それは「ホテルローヤル」の持ち主の遺骨で、
引き取り手がないから、寺で預かってくれという。
ホテルの持ち主田中大吉の最後の言葉は、
「本日開店」だったという。

Bえっち屋
ホテルローヤルの持ち主・田中大吉の娘・雅代は、
高校卒業以来10年間、
このホテルの事務室で生活してきた。
母のるり子は雅代の卒業式の翌日、
出入りの飲料水メーカーの配達員と一緒に町を出た。
父は肺を患い、入院中だ。
ホテルの一室で心中者が出て以来、
ホテルは閑古鳥が鳴き、
閉めることにした。
軽自動車に荷物を積んで、
貯金が続く限り
どこに行くか分からない旅を続けるつもりだ。
あとは、売れ残ったアダルト玩具を引き取ってもらうだけだ。
引き取りに来た宮川と雅代は
心中者の出した部屋で宮川と交わろうとするが・・・

Cバブルバス
恵と真一は、
墓の前で遅れた寺の住職を待っている。
電話で催促すると、
予定の記載ミスで、住職は他の墓に行っているという。
読経を断り、その帰り道、
たまたま前を通ったホテルローヤルに二人は入る。
住職に渡すはずだった5千円を使って、 
ここで休憩しようというのだ。
真一は個人で家電の販売をしていたが、
行き詰まり、
今は大手家電販売店の主任をしている。
生活は厳しく、
転がり込んで来た父に部屋を奪われて、
くたくたに疲れて帰って来ても、
満足な寝床も確保出来ない生活だ。
ホテルに入った二人は
バブルバスに入り、身体を重ねる。
真一の左遷が話題に登っていた頃、
父が息を引き取る。
左遷も見送られた。
恵はパートに出る決心をし、
お金が余ったら、
またあのラブホテルに行こうと思う。

Dせんせぇ
高校教師の野島は、
木古内(きこない)駅で札幌の家に帰る途中、
教え子のまりあと一緒になる。
まりあは母と義弟が失踪、
その借金を押しつけられた父が身をくらまし、
「ホームレス女子高生」だと笑っている。
まりあはついに札幌までついてきてしまい、
野島は妻のいるマンションに向かう。
妻には三連休に帰宅することは告げていない。
実は、野島の妻は20年来の愛人がおり、
その男は野島に妻を紹介した元校長だった。
1年前にそれが発覚し、
妻は「別れる」と泣いてあやまった。
しかし、マンションで、
野島は妻がその校長を家に引きずり込むところを見てしまう。
その夜、ビジネスホテルにまりあと泊まった野島は、
翌日、野島は終着駅が一番遠そうな釧路行きの電車を選ぶ。
2枚買った切符の1枚をまりあに渡して。

E星を見ていた
ミコは「ホテルローヤル」で掃除婦をしている。
船員同士の喧嘩が足を痛めて船を下りて以来、
働こうとしない十歳下の夫と
山奥で暮らしている。
3つ作ったおにぎりを3回に分けて食べているような極貧の暮らしだ。
子供は3人いるが、
みんな家を出て、
時々電話をくれる札幌で左官をしている次男以外は音沙汰がない。
ホテル宛てに来た次男の手紙を受け取る。
中には3万円入り、
「会社がかわって、給料がすこしだけ良くなりました。
この金は母さんが好きに使ってください」
と書かれていた。
ミコはこのお金で通勤用の自転車を買おうと考える。
そんな時、次男が事件で報道されていたのを知る。
左官職人かと思った次男は、
暴力団の一員で、
死体遺棄事件の犯人として逮捕されたのだ。
ミコはこんな時、周囲がミコに優しくなるのを知る。
その夜、ミコは家に帰らずに林を彷徨い、
星を見上げて泣く・・・

Fギフト
看板職人の田中大吉は、
団子屋の売り子・るり子を愛人にする。
建築会社の勧めで、借金をし、
湿原を見晴らす高台にラブホテルを建てることを決め、
大吉はるり子を連れて行く。
一方、妻は夫がラブホテルの経営をすると聞き、
離婚届けを置いて、実家に帰ってしまう。
迎えに行った大吉は
義父から屈辱を受けて帰る。
息子も2階の窓から侮蔑の視線を投げつける。
その日、るり子のところに戻る途中、
大吉は高いみかんを買い求める。
るり子が妊娠し、つわりが始まっていたのだ。
るり子にみかんを食べさせた後、
みかんからはがした金色のシールに「ローヤル」とあるのを見て、
大吉は「ホテルローヤル」の名前を思いつく。

というわけで、
ホテルの主人、
その娘、
掃除婦、
客、
心中した男女、
遺骨を世話する住職の妻
廃墟を訪れる男女
をそれぞれ主人公にした7つの作品。
そのどれもが趣向を変えながら
最後は一つのラブホテルに結びつく。
しかも@からFへ時間をさかのぼる。

ホテルローヤルの名前が全く出てこない「せんせぇ」も
実は、その数篇前に、関わりが伏線として秘められている。
そういう意味で、
技巧をこらした短編集としてのうまさは感ずる。

しかし、読後感はすこぶる悪い
やりきれない息づかい。
その根底にある貧困。
知恵の欠如。
まあ、人間の真実を描くのが小説だし、
その意味で、一つの真実が描かれていることは確かだが、
それにしても救いがない。
いや、なくても構わないのだが・・・
この小説、好きになれない。

著者の3回の直木賞候補作「ラブレス」の感想は、↓をクリック。

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20120309/archive




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2018/3/13  15:11

 

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