小説『刑事の子』  書籍関係

[書籍紹介]

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宮部みゆきの初期の作品。
「我らが隣人の犯罪」(1987)でオール読物推理小説新人賞を取った後、
「パーフェクト・ブルー」(1989)で長編デビュー、
日本推理サスペンス大賞受賞を取った
長編「魔術はささやく」(1989)の後、
短編集を一つ挟んだ
第3長編に当たる。

1990年4月に「東京殺人暮色」としてカッパ・ノベルス(光文社)刊。
1994年10月、「東京下町殺人暮色」と改題して光文社文庫に収録。
2011年9月、「刑事の子」と改題して、光文社刊。
2013年9月、光文社文庫に収録。

なぜ改題したのかね。
新刊と思ってダブって買ってしまう人もいるのではないか。

中学一年の八木沢順は、
刑事である父、道雄が離婚したため、
東京の下町に引っ越すことになり、
なにかと不自由なので、家政婦のハナさんを雇って生活していた。

その頃、妙な噂が近隣で広がる。
近くのある家で若い女性が殺され、埋められたというのだ。
その家は篠田東吾という画家の一人住まいだった。

そんな噂に合わせたかのように、
バラバラ事件の死体が荒川で発見される。
頭と右手首だ。
道雄はその捜査本部の一員となり、
若い刑事の速水とコンビを組むことになった。

ある日、順の家に差し出し人不明の手紙が届く。
そこには「しのだ とうご は ひとごろし」と書かれていた。

一方、捜査本部には、犯人からの犯行声明が届いた。
次の死体の捨て場所が書かれており、
頭部と左足が発見された。
つまり、被害者は二人、ということになる。
しかも、その犯行宣言は
順の家に届いた手紙とよく似た書体で書かれていた。

順は篠田東吾のことが気になって、家を訪ねる。
そこで、彼の最高傑作「火炎」という絵を見せてもらう。
それは、昭和20年の3月10日の
東京大空襲での修羅場を描いたものだった。

篠田の屋敷も捜査対象となったが、何も出なかった。
そんな時、順は篠田家を見ている若い女性に遭遇する。
二度目に会った時、前に会ったと言うと、
女性は「マリエンバートだったかしら。去年ね」
という謎の言葉を残して去る。

被害者の身元は意外な経過で割れた。
篠田の世話をしている才賀という公認会計士の息子が
篠田に女優の卵をモデルとして紹介し、
その女性が、少年法の改正を求める集会に参加しており、
そこに篠田も関係していた。
女性二人が連絡取れず、
その線から被害者が判明したのだ。

一方、順は犯行宣言と家に来た手紙の筆跡の類似の真相
をあることから知るようになり・・・

というわけで、刑事の子がいかにも
刑事の子らしい独自調査をしながら、
事件に関わっていく。

宮部みゆきの初期の作品で、
その後の宮部みゆきの軌跡の萌芽を見ることが出来る。
たとえば、少年犯罪で、
犯人像は一般常識から逸脱した新人類のような若者。
また、犯行は猟奇的で残酷極まりない。
そして、道雄や速水やハナの脇役の人間像の魅力的なこと。

また、「コレクター」や「去年、マリエンバートで」など、
ちょっと古い映画作品がちりばめられているのも嬉しい趣向だ。

ただ、犯行が二段重ねになっているのだが、
二段目の犯行の動機が
危険を犯してまでそんなことをするだろうか、
という内容なのが弱い。
また、犯人がそれまでの描写を裏切る印象なのも欠点だ。

欠点はあるのものの、
その後の宮部みゆきの活躍を彷彿とさせるようで、
宮部ファンとしては、満足いく内容だった。
シリーズ化されなかったのが不思議だ。

なお、28年前の作品なので、
パソコンもインターネットも
スマホもSNSも出て来ない。
それらの普及が物語の展開を早くしているんだな、
と改めて感じた次第。





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