小説『ふたご』  書籍関係

[書籍紹介]

クリックすると元のサイズで表示しますふたご

題名は「ふたご」だが、
双生児の話ではない
登場する男女の関係がふたごのよう、
あるいはふたごであったら、
または、ふたごでありたい、
というような重層的な意味あい。

物語の始まりの時は、
二人とも中学生。
西山夏子と月島悠介。
ただし、月島の方が一学年上。

その中学から高校までの二人の交流を描くのが第一部。
夏子はピアノをやっている。
月島は高校に進学するが、適応できずに中退してしまう。
父親の勧めでアメリカン・スクールに入り、
その後、アメリカに留学するが、
パニック障害に陥り、
2週間で帰国。
「注意欠陥多動性障害」と診断され、
精神病院に入院する。
その間の月島への思いが夏子の独白でつづられる。
一貫しているのは、
月島に翻弄される夏子の姿。
しかし、二人は離れられない。
それが「ふたご」のゆえんか。

私はこの時代の思春期の悩みに
共感する年齢ではないので、
観念的で幼稚な二人の会話は、読んでて辛かった。
「そんな悩みは時間が全て解決してくれる」
と思うので。

月島の症状も、半分は甘えに裏打ちされたもので、
勝手にしろ、という感じだった。

闘病する月島を見守る夏子の気持ち。

骨折を素人が治せないように、
精神の病気も素人が治すことは出来ない。
私が出来るのは、月島が抱える問題を「病気」だと思うことだ。
骨折した人が速く走れないのは、性格の問題ではないということ。
盲腸の人がご飯を食べられないのは、趣味の問題ではないということ。
そう思うことで結局誰よりも救われるのは私なのかもしれない。


そして、第1部は、次のように締めくくる。

生まれた場所も、見てきた景色も、同じだ。
苦しみも哀しみも、共有出来る。
そう信じてしまった私たちが
再び月島悠介と西山夏子とという
二人の人間へと分離することは、
無理やり身体を引き裂かれるような痛みを伴った。
自分たちはふたごのように、
全てを共有することなんて出来ないと分かるまでに、
何年費やしたのだろう。
どうしてこんなに苦しまなければならなかったんだろう。
もう私たちが本当にふたごだったら、
こんなに苦しむこともなかったはずだ。


第2部は、第1部と様相が一変する。
夏子は音楽大学に進学し、ピアノを弾く毎日。
月島は退院後、塾や予備校に通っても、
最後までやり遂げられない。
そのうち、月島がバンドをすると言い出し、
2人のメンバーを集め、最後には夏子もバンドに参加する。
夏子は自分の事情があるのに、月島には逆らえない。
元印刷工場をライブハウスに改装し、
練習し、演奏する共同生活の毎日。
無計画で行き当たりばったりの行動に
読んでいて辟易させられる。
しかし、ライブハウスで歌った時、
スカウトを受け、デビューすることになる。
そんなうまい話はないだろう、
と思ったら、これほぼ実話なのだった。

著者が4人組のバンド、
SEKAI NO OWARIのピアノを担当している
藤崎彩織(ふじさきさおり)という人だと知ったのは、
読み終えてからだった。
で、調べてみると、
月島とは、ボーカル担当の深瀬慧(ふかせさとし)のことだと分かる。
1学年離れていることも、
深瀬が高校を中退してアメリカンスクールに行ったことも
アメリカ留学を2週間で帰国し、
精神病院に入院したことも、
バンドを組んで、ライブで音楽事務所のスカウトにあったことも、
全て事実だった。
つまり、この本は著者の自伝的小説だったということだ。
もちろん創作も加えられているだろうが、
大筋は事実をなぞっている。

つまり、私小説
それで描かれていいる世界が
リアリティはあるものの、
深みがないことが理解出来た。
筆は立ち、感性も鋭いが、
自叙伝を読まされた感が強い。
つまり、小説としては出来上がっていないのだ。
バンド活動だって、日の目を見たからいいが、
普通なら、意欲だけ空回りの失敗物語だ。

ただ、SEKAI NO OWARIは、
武道館コンサートを成功させ、
海外にも進出しているという。

↓You Tubeで聴いてみたところ、
彼らは才能はあるようだ。

https://youtu.be/Q54iJmrKBsA

しかし、中学・高校・大学という
未完成な人間の未完成な悩みを描いた本作は、
私には面白くは感じられなかった。

それでも先の直木賞の候補になり、落選。
選考委員の評は厳しい。

桐野夏生
好きな相手に、
「自分たちは、恋人でもなく、友達でもなく、『ふたご』である」
と規定された主人公。
この依存関係をもっと突き詰めたら面白くなったかもしれない。
しかし、バンドの成功話によって、曖昧になってしまった。

北方謙三
小説的なフィルターを通さないまま書き綴ったというところが感じられ、
それが前半の稚拙さを際立たせてしまった。
ただ作中で、登場人物たちは少しずつ成長を遂げ、
それを描く作者も成長しているという、不思議な感慨を持った。

林真理子
とまどった。
ところどころみずみずしい感性は見られたものの、
まだ小説には昇華していない。

東野圭吾
若者たちの心をスマホから引き戻せるとしたら、
もしかしたらこういう小説なのかなと思った。
しかしそれは単なる褒め言葉ではなく、
わかりやすくて低刺激であることを指摘した苦言でもある。
いずれにせよ、自伝的作品かつデビュー作となれば、
これ一作で作者の才能を推し量るのは無謀というものであろう。

伊集院静
数ページ読んだ時、
あっ、もしかして私が待っていたものを、
この人は背中に背負って、若いいっときを生きてくれていたのでは、
と胸がときめいた。
正直、その時、私は作者が世間で名が知れた音楽のお嬢さんとは知らなかった。
ただ読み進めて行くうちに、おや、どうしたのか、という状況があらわれた。
この人はまだ、文学、小説がこんなに素晴らしいものだと、
彼女がピアノを習得する上で感じた先達の名曲、
すなわち名作と対面していないのではと思った。

宮部みゆき
文章の随所に光るものがあるのは、
他分野の書き手だからこそ「ツールとしての文章」に
こだわったからだと思います。
周囲の期待に慌てずに、
じっくりと次の作品を書いていただけたらと思います。

浅田次郎
「才能のありそうなダメ男」は、ものすごくモテるのである。
しかしどうやら作者はそうした当たり前の関係を、
何か特別な恋愛の形だと思いこんでいるらしく、
大人の読者はみなそのことに気付いたとたん
投げ出したくなったであろう。
少くともそれくらいの大人の小説に候補作を絞るというのは、
文学賞の見識ではあるまいか。

高村薫
題材を用意してみたものの、
それを小説に仕立てる手つきが小説家のそれではない。
個人的な関心事を連ねただけでは内輪のブログにしかならない。

宮城谷昌光
読みはじめてすぐに、この人には非凡なものがあると感じた。
この作者は、否定形がつかえる。
そこが非凡である、というのは少々飛躍しすぎた説明であるかもしれない。
しかしたとえば、私は男である、と書くところを、
私は女ではない、と書いたらどうであろうか。
この「ない」を書ける作家は多くなく、
ほとんどの作家が肯定形を終始させて小説を書いている。
この小説にある清澄感と誠実さには好感をもった。


ようやく、前回直木賞の候補作5篇を読了。
順番をつけると、
                                        
1位 門井慶喜「銀河鉄道の父」[受賞作]
2位 澤田瞳子「火定」
3位 彩瀬まる「くちなし」
4位 藤崎彩織「ふたご」
5位 伊吹有喜「彼方の友へ」

直木賞候補作のレベルが落ちていることを感じる。

それぞれの感想ブログは↓をクリック。

銀河鉄道の父

火定

くちなし


映画『菊とギロチン』  映画関係

娘は、今朝、オーストラリアから帰って来ました。

エアーズロックは、

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思ったより険しい登山道で、

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まるでロッククライミングのよう。

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よじ登るように登って、

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頂上で、このようなポーズを。

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「晴れ女」の娘には、今度も天気が味方。
長年の念願を果たして帰国しました。


[映画紹介]

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大正末期。
世界恐慌や関東大震災が起こり、
大杉栄が殺され、
飢餓と貧困が世間を覆っていた不穏な時代。
その時代を切り取るような二つのグループを映画は描く。

一つはアナキスト(無政府主義者)結社のギロチン社の若者たち。
もう一つは女相撲の一座・玉岩興行の女力士たち。
どちらも時代が生み出した、はみ出し者集団だ。

ギロチン社のアナキストたちが
理想を口にするものの、
資本家を脅かして得た金を酒と女に注ぎ込み、
していることと言えば、強がりの議論と蛮勇と
無意味な個人テロに終始しているのに対し、
女相撲の力士たちは、
女というだけで様々な困難な生き方が強いられ、
夫の暴力から逃げて来た者や家出娘や遊女など、
様々な事情を抱えた
駆け込み寺の様相を呈し、
本気で「強くなりたい」という願望により
女として自由になりたいという夢を託した者たちだ。

その二人のグループが
ある漁村で出会う。
その時・・・

まず、女相撲とアナキスト集団の二つを遭遇させるという
着眼点に瞠目した。
風紀紊乱の疑いから常時官憲の監視対象にされているのは、
アナキストの「主義者」と同じ。
大正末期の一時代の雰囲気、
時代の中での閉塞感がよく捉えられている。

女相撲は江戸時代から始まり、
1960年代まで日本に存在した。
私の祖父が隣町の芝居小屋にかかっていた女相撲の力士の中に
早死にした娘に似た子をみつけて贔屓にした、
という話を母親から聞いたことがある。

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その女相撲の描写がなかなかいい。

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ショーアップされたものではなく、全くのガチ相撲。
(日本大学の相撲部の指導を受けたという)

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その迫力ある描写が物語に真実味を加える。

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興行元との関係や土俵作り、
宣伝のために漁村の道を練り歩く姿と
流れる「相撲甚句」。
砂浜で躍り狂う女力士たち。
初めて観る光景に映画の長さを忘れた。

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物語は、力士の花菊と十勝川という二人と、
ギロチン社の中濱鐵と古田大次郎の二人に話がしぼられていく。
特に、朝鮮人の十勝花に対する
在郷軍人の対応が悲惨。
関東大震災の時の朝鮮人虐殺も関係してくる。

背景には、次第に力を増してくる軍部の力と
思想弾圧、貧困の問題が横たわる。
女相撲とギロチン社は
格差のない平等な社会を目指すことで繋がっているように見えて、
アナキストたちは弾圧にあっけなく瓦解していく根無し草だが、
女相撲の方は戦後まで生き抜く。
やはり、女の方が強い。

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題名は、
中濱鐵の
「菊一輪ギロチンの上に微笑みし 黒き香りを遥かに偲ぶ」
という短歌から取られたものだそうだが、
花菊の「菊」と政治結社名の「ギロチン」の関わりのようにも見え、
ルース・ベネディクトの「菊と刀」を想起させる。
発表当初「女相撲とアナキスト」という副題がついていたが、
やがて「菊とギロチン」だけが題名となった。

中濱鐵を演ずるのは東出昌大

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古田大次郎は佐藤浩市の息子で映画初出演の寛一郎

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花菊を演ずるのは、
オーディションで選ばれた木竜麻生(きりゅう・まい)。

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十勝川は韓英恵が演ずる。

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「64─ロクヨン─』2部作を手がけた瀬々敬久監督による
自主制作映画。
クラウドファンディングの方式で資金集めをした。
30年来暖めた題材を映画にした瀬々監督の熱量が半端でない。
画面の向こうからエネルギーがほとばしる。
3時間を越える作品と聞いておじけづいたが、
退屈なく観終えることが出来た。
監督の演出力のたまものだろう。

5段階評価の「4.5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/8UX6CFXgwKk

テアトル新宿で上映中。
長い映画のためか、料金割り増しなので、注意。


この時代のことを今の物差しで計ることは出来ないが、
背景に貧困が大きく横たわっていることは明白だ。
平等を叫び、自由を叫ぶ若者の意気は当然で、
戦後も革命を叫ぶ集団はあったが、
経済が発展し、富が広く行き渡る中で消滅した。

結局は経済を良くすることが世の中を良くすることで、
ストライキや労働争議が頻発する諸外国に比べ、
日本ではもう何十年もストの声を聞かない。
経済を豊かにすることの方が
革命を叫び、テロで世直しを図ることよりも
はるかに大きな解決策だったのだ。

そういう意味では、
賢人・曽野綾子さんが言うとおり、
日本は国家運営を成功したのだ。
異論はあろうが、
それは、世界を知らないからで、
世界の貧しい地域から比べれば、
日本は天国だ。
世界の不幸な人々の願望を日本人は
生まれながらにして持っている。

戦争のない平和な住環境、
電気もガスも上下水道も交通網も整備され、
食料は豊富、義務教育があり、
医療は世界に冠たる国民皆保険がある。
貧困者は生活保護を受け、
それを目当てに外国から移住してくるくらいだ。
移動の自由も言論の自由もあり、
どんなに政府を攻撃しても、
法律に違反しない限り逮捕されることはない。
国会ではどんな理不尽な政府攻撃をしても弾圧されはしない。
戦前とはわけが違う。

親を選べないように、
生まれた国は選べない。
日本人は、日本に生まれたことを感謝すべきなのだ。

ただ不幸なのは、
そのような幸運に恵まれたことを
国民が感じていないことだ。
外に出てみれば分かることなのに。

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アイス総選挙  耳より情報

暑いですね〜。
この天気だと、氷菓がバカ売れでしょうね。
メーカーの株価も上がりそう。

先日、テレビ番組で、
「アイス総選挙」というのが放送されていました。

これは、13社644種のアイスに対して、
国民1万人が投票した
美味しいアイスのランキングだそうです。

結果は、次のとおり。


1位 エッセルスーパーカップ 超バニラ(明治)

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2位 ジャイアントコーン(チョコナッツ)(江崎グリコ)

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3位 チョコモナカジャンボ(森永製菓)

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4位 雪見だいふく(ロッテ)

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5位 エッセルスーパーカップ チョコクッキー(明治)

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6位 ガリガリ君ソーダ(赤城乳業)
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7位 PARM(パルム)チョコレート(森永乳業)

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8位 アイスの実(濃いぶどう)(江崎グリコ)

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9位 ピノ(森永乳業)

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10位 爽 バニラ(ロッテ)

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11位 ミニカップ クッキー&クリーム(ハーゲンダッツジャパン)

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12位 あずきバー(井村屋)
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13位 ミニカップ バニラ(ハーゲンダッツ)

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14位 エッセルスーパーカップ 抹茶(明治)

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15位 MOW(モウ)バニラ(森永製菓)

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16位 アイスボックス グレープフルーツ(森永製菓)

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17位 あいすまんじゅう(丸永製菓)
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18位 パピコ チョココーヒー(江崎グリコ)

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19位 ミニカップ グリーンティー(ハーゲンダッツジャパン)

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20位 クーリッシュ バニラ(ロッテ)

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21位 ミニカップ ストロベリー(ハーゲンダッツジャパン)

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22位 クリスピーサンド キャラメルクラシック(ハーゲンダッツジャパン)

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23位 サクレレモン(フタバ食品)

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24位 ガーナスティック(ロッテ)
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25位 エッセルスーパーカップ Sweet's 苺ショートケーキ(明治)

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26位 モナ王 バニラ(ロッテ)
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27位 しろくま(丸永製菓)

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28位 サンデーカップ(パリパリチョコ)(森永製菓)

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29位 ジャージー牛乳ソフト(オハヨー乳業)

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30位 ガツン、とみかん(赤城乳業)
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以上は単品部門で、
箱に入ったマルチパック部門は、
次の順位。

1位 PARMチョコレート(森永乳業)

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2位 エッセルスーパーカップミニ 超バニラ(明治)
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3位 ヨーロピアンシュガーコーン バニラ(クラシエ)

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4位 ラバーズコレクション(ハーゲンダッツジャパン)

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5位 ピノチョコアソート(森永乳業)

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6位 ガーナ2層仕立て(ロッテ)

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7位 ガリガリ君ソーダ(赤城乳業)

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8位 BOXあずきバー(井村屋)

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9位 バニラバー北海道(ロッテ)

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10位 Doleもりだくさんフルーツ(ロッテ)

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短編集『銀行狐』  書籍関係

娘は一昨日の夜行便で発って、
今、オーストラリアにおります。
来年秋でエアーズロックが上れなくなるので、
念願の登頂に。

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テレビドラマ「世界の中心で、愛を叫ぶ」
聖地巡礼だそうです。
やれやれ。


[書籍紹介]

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池井戸潤の初期短編集。2001年9月刊。
江戸川乱歩賞受賞(1998年)後の第1作「ローンカウンター」を含む。
テレビドラマ「花咲舞が黙ってない」で取り上げられたものもある。

「金庫室の死体」
破綻した銀行の閉店処理中の支店の大金庫で
バラバラ死体が発見される。
被害者は資産家の独居老婦人だった。
調べていくと、2億円の定期預金が半年前に引き出されていた。
しかし、受け取りの筆跡が違う。
その上、担当行員は交通事故で亡くなっていた。
2億円はどこに消えたのか。
支店内を殺人現場にした真意は何か。
倒産企業の返済予定表を見ていた刑事が
ある数字に目をつけるが・・・
「浮き貸し」という犯罪の手口を扱った作品。

「現金その場かぎり」
閉店時の銀行で、300万円の札束が紛失した。
1カ月前にも200万円紛失したばかりだ。
徹底的な捜索が行われ、
ゴミ袋や行員の私物まで調べたが出てこない。
「現金その場かぎり」という原則があり、
現金の授受は、その現場を押さえなければならない。
係長の灰原は、防犯ビデオの画像を見ていて、
ある事実に気づく。
顧客への配布品には金額に応じた格があり、
少額の取引なのに高額者への品物が渡されていたのだ。
同じ顧客の別の日の取引のビデオを見ると、
同じ窓口行員から、同様の品物が渡されていた。
しかし、「現金その場かぎり」。
実際に現金が渡された時をつかまえるしかない。
その日の見当をつけた灰原は、
その人物がやって来るのを待つが・・・
謝礼配布物受け渡しの商習慣を扱った犯罪の一篇。

「口座相違」
東都銀行渋谷支店で一つの不祥事が発覚した。
「橋本商事」という会社への3千万円の振込があったが、
口座番号が間違っていたたため、コンピューターがはじき出した。
それほど珍しいことではなく、
正しい口座番号に訂正して入力すれば済むことだったが、
口座番号を調べた行員がミスを犯した。
検索画面に「橋本商事」と打ち込むところを
「橋本商会」と入力してしまったのだ。
支店の業績考課の低下を恐れる副支店長の指示は
「もみ消せ」というもので、
橋本商会から3千万円の小切手をもらって
当座預金から払い出したことにすれば、
口座相違した証拠は残らない、というのだ。
萬田係長が橋本商会を訪ねると、
そこは麻雀屋で、そのような会社はないという。
しかし、橋本商会には、手形帳が交付されている。
担当者のずさんな調査によるものだった。
ほどなく橋本商会の残高不足が明らかになり、
1億5千万円の手形が不渡りになりそうだという。
しかも、横川プラスチックという会社の裏書きが入っており、
このままいけば、横川プラスチックの倒産が確実になる。
決済時間までに橋本商会の入金はなく、
横川プラスチックの倒産が決まるが、
東都銀行は横川プラスチックに8億円もの融資をしていた・・・
架空会社手形詐欺計画倒産を扱った作品。

「銀行狐」
帝都銀行頭取宛てに脅迫状が届く。
差出人は「狐」。
続く脅迫状では新橋支店が標的とされ、
ゴミ置き場で火事が起こる。
原因はキャッシュコーナーのゴミ箱に捨てられた時限発火装置で、
その日、ヘルメットを着用したままの客が訪れていた。
更に顧客名簿の盗難と流出があり、
為替部に資金調達の電話が入り、
300万ドルの資金調達がされた。
行内のルールにのっとったやりとりで、
資金は送金されたが、後で空注文だったことが発覚、
取り消しをしたものの、為替の変動で数百万円の損失が出た。
そして、ATMを使って、神谷新橋支店長宛てに
「キツネ」を名乗る者から4円の送金があった。
神谷支店長は銀行の出世頭で、
調査した指宿は、笹塚支店長時代の
変額保険を巡る裁判沙汰があったことに行き着く。
その時、証人に立った元帝都銀行行員の加瀬に指宿は会うが・・・
変額保険を巡る復讐物語

「ローンカウンター」
渋谷近辺で3件の連続殺人事件が起こる。
いずれもアパートの一人住まいの女性で、
犯され、殺されていた。
捜査本部では3人の関連性を探るが、
共通点は美人の一人住まいということと、
犯人を中に招き入れている、という点だけだった。
3人と共通して面識がある人間、を探るが、
交差する点はみつからない。
刑事の山北は、仕事の合間を縫って、
車の購入のローンを組むために銀行を訪れる。
そこで担当してくれた行員から、驚くべき示唆を受ける。
この行員、伊木遥こそ、
池井戸潤の江戸川乱歩賞受賞作「果つる底なき」の主人公。
銀行口座の出入りを調べれば、
その持ち主のいろいろなことが分かる、
というのは、行員ならではの着眼点だ。
その示唆で、一挙に3人の共通点が判明し、
犯人の逮捕につながる。
刑事もの、犯罪ものと思わせて、
最終的に銀行ものにつながる鮮やかな展開。

いずれも銀行を舞台に、
元銀行員でなければ書けない内容だ。
本書の解説に

横山秀夫が「陰の季節」によって
「警察」という肥沃な舞台を再発見したように、
池井戸潤もミステリの舞台としての
「銀行」を発見したのである。


とあるように、池井戸潤は、銀行という尽きない油田を持ったのだ。

ただし、銀行に対して批判的な体質を持っていることが
随所の描写に表われている。

初期短編であるため、
今の作風とは多少異なるが、
一つ一つ、読者を惹きつけ、
最後まで翻弄する手腕は
既にこの時に発揮されている。


映画『セラヴィ!』  映画関係

[映画紹介]

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原題の「C'EST LA VIE! 」は、「それが人生」の意だが、
フランス語原題は「LE SENS DE LA FETE」。
「ごちそうの意味」「パーティーの意味」「人生の意味」など、
様々な意味が重なっている。

ウエディングプランナーのマックスは、
30年にわたって数え切れないほどの結婚式を手がけてきたが、
そろそろ会社を売り払って引退しようと考えていた。

今日はパリ郊外の17世紀の古城を借りての結婚式をプロデュース。
しかし手配上のミスなどが重なって、
集まったスタッフはポンコツばかり。
ウエイターたちはプロ意識がなく、
17世紀の衣裳もカツラも「暑いから着たくない」と言い出す。

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ウエディング・シンガーは代役で、
自分のワンマンショーと勘違いしており、
スタッフともトラブル。
(このスタッフとの関係が思わぬ方向に進む)

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バンドは昼食に食べた腐った肉のせいで腹痛を起こし寝込んでしまい、
専属カメラマンはだらしない格好で、料理をつまみ食いし、
その上、GPSの出会いサイトで相手探しにふける。
スタッフの一人はシェーバーの充電のために
冷蔵庫のプラグを抜いたままにして食材を腐らせる。
新婦を口説くスタッフまで出現する。
新郎も自己チュー男で、

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自分への賛辞を強要、
スピーチに長い時間をかけて参加者をしらけさせる。
マックス自身も妻と別れ話が進行中の上、スタッフと不倫している。
パーティーの最中に現れた不審な男に、
労働監督局の査察官が来たと思ってパニックに陥る。
そして、パーティーの最大の仕掛けで、
大きな手違いが起こり、悲惨な結果に・・・

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という具合に、次から次に起こるトラブルとハプニングに
マックスがどう対処するか。
それをフレンチコメディらしく、
小ネタ満載で展開してみせる。
窮地の連続だが、カメラマンは言う。
「人生の窮地は、長い人生から見れば一瞬の出来事」
人生は楽しんだ方が勝ち。
そして、登場人物の一人が言う。
「人の幸せに寄り添えるなんて、
なんて魅力的な仕事でしょう」


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監督は「最強のふたり」(2011)のコンビ、
エリック・トレダノオリヴィエ・ナカシュ

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マックスにジャン=ピエール・バクリが扮し、ベテランの味。

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その他の出演者たちが、
みんな不思議な魅力で、その上、おバカで笑わせる。

2015年にパリ同時多発テロが起きて、
人々の気持ちが沈んでいた時、
心から笑い、楽しむことが必要とされていたことから、
純粋に騒いで楽しめる雰囲気の作品をつくりたい、
という意図で作られたこの作品、
2017年10月にフランスで公開され、
初週観客動員数1位を記録、
公開1ヵ月で興行収入25億円を突破し、
記録的大ヒットとなった。

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それにしても、
フランス語がこんなにやかましい言語だと感じたのは初めて。
そして、ヨーロッパ人の自己主張はすごい。

5段階評価の「4」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/kPeiYKYubCw

渋谷のシネクイント(新装開館。前と場所が違う)他で上映中。


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