今年の重大ニュース  様々な話題

2016年が、また過ぎようとしています。

今年、私は海外旅行は5回。
(ベトナム、ウズベキスタン、インド、ソウル、上海)
昨年より増えました。
家族の国内旅行1回(宮島・門司・萩)、
日帰り旅行2回(鎌倉、横須賀・猿島)、
近隣の散策2回(浜離宮、千鳥が淵のボート)
と、いろいろ楽しみました。

それでは、昨年同様、
読売新聞の読者投票による
2016年の重大ニュース、ベスト30を。
ただし、締め切りが12月中旬だったため、
安倍首相の真珠湾訪問、は入っていません。


〔国内〕

1位
熊本地震、死者50人
2位
東京都知事に小池百合子氏。築地市場の豊洲移転延期、五輪施設計画見直し
3位
リオ五輪、史上最多のメダル41個
4位
天皇陛下、退位のご意向を示唆
5位
オバマ米大統領が広島訪問
6位
ノーベル生理学・医学賞に大隅氏
7位
北海道新幹線が開業
8位
相模原市の障害者施設で19人刺殺
9位
18歳選挙権施行
10位
「ポケモンGO」日本で配信開始

11位
伊勢志摩サミット開催
12位
参院選で与党大勝、改憲派3分の2超
13位
長野でスキーバス転落、15人死亡
14位
元プロ野球選手・清原容疑者を逮捕
15位
日銀がマイナス金利導入決定
16位
113番新元素は「ニホニウム」
17位
台風10号、岩手・北海道で死者22人
18位
イチロー、日米通算最多安打
19位
博多駅前の市道が大規模陥没
20位
日本ハムが10年ぶり3度目の日本一

21位
舛添東京都知事が辞職
22位
レスリング女子・伊調選手に国民栄誉賞
23位
東京五輪新エンブレムに「組市松紋」
24位
消費税率引き上げを2年半延期
25位
電力小売り全面自由化スタート
26位
三笠宮さまご逝去
27位
「山・鉾・屋台行事」がユネスコ無形文化遺産に
28位
経営再建中のシャープ、鴻海が買収
29位
三菱自動車が燃費データ偽装
30位
民進党が発足


[海外]

1位
米大統領選でトランプ氏勝利
2位
英国民投票で「EU離脱」過半数
3位
韓国・朴大統領、友人女性の国政介入疑惑で窮地に
4位
ノーベル文学賞にボブ・ディランさん
5位
「パナマ文書」公開で各国に波紋
6位
オバマ米大統領がキューバ訪問
7位
北朝鮮が初の「水爆実験」実施発表
8位
ロシアの国主導でのドーピング認定
9位
ミャンマー新政権発足。スー・チー氏は事実上トップの国家顧問に就任
10位
キューバのカストロ前議長死去

11位
フィリピン大統領にドゥテルテ氏就任
12位
仏でトラック突入テロ、85人死亡
13位
ジカ熱でWHOが緊急事態宣言
14位
エクアドルで大地震、死者660人超
15位
仲裁裁、南シナ海の中国主権認めず
16位
イタリア中部で大地震。死者約300人
17位
ボクシング元王者モハメド・アリさん死去
18位
タイのプミポン国王死去
19位
ブリュッセルで空港・地下鉄同時テロ
20位
米フロリダで銃乱射、49人死亡

21位
コロンビア和平合意、サントス大統領にノーベル平和賞
22位
重力波を初観測。米研究チーム発表
23位
台湾南部の地震で死者約120人
24位
米大リーグ、カブスが108年ぶり制覇
25位
シリア北部アレッポ空爆、内戦泥沼化
26位
ローマ法王とロシア正教会の総主教、1054年の分裂以降、初の会談
27位
台湾総統選で蔡英文氏が当選
28位
トルコの空港で爆弾テロ、44人死亡
29位
パリ同時テロ実行犯をベルギーで逮捕
30位
英メイ新首相就任


映画『アイ・イン・ザ・スカイ』  

[映画紹介]

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最新鋭のドローン偵察機が、
上空2万メートルから
ケニアのナイロビにある一軒家の周辺を映し出している。
今、そのイスラム系過激派の隠れ家の中では、
テロリストたちの自爆テロの準備が進行し、
2人の人物が体に爆弾を装着している最中だ。
家の中に侵入した超小型ドローンが
その映像を送り出している。

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そうした映像を凝視するのが、
ロンドンの軍の諜報機関の将校、
アメリカの合同テロリスト捕獲作戦の会議室のメンバー、
そして、ネバダ州の米軍基地にあるドローン操作室のパイロット。

自爆テロ阻止のため、
ドローンからのミサイル攻撃が決定されるが、
まさに引き金を引こうとした瞬間、
中空からの映像がその手を止める。
爆撃される家の外の壁沿いに
少女が台を広げ、
パンを売り始めたのだ。

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ここから、一人の少女の命を守るのが先か、
それとも自爆テロで予想される
数十名の一般市民の命を救うべきか、
という議論が、
軍人や政治家たちの間で、果てし無く続く。

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素晴らしく緊迫感に満ちたドラマである。
視点がドローンからの映像、
会議室、ロンドン、ネバダと代り、
これにナイロビの地上の映像、
室内の映像が加わり、
多元中継の様相。
それが相乗効果を呼び、
スリリングに物語が展開する。
特に上空のドローンからの映像が
「神の目」を思わせて、目を奪い、
息もつかせない。

強硬意見は、ロンドンの将校キャサリン・パウエル大佐と
アメリカの国防相のフランク・ベンソン中将。
対するは、純粋に理論を述べる法律顧問と
責任の所在を気にする政治家たち。
軍人と背広組、強硬派と慎重派の意見が対立し、
内務相、外務相に問い合わせ、
イギリスの首相にも決定を仰ぐが、
責任の回避と、たらい回しばかり。
議論の中心は、少女の命の問題よりも、
この作戦の経過が明らかにされた時の
国際世論の反応なのだ。

その間にテロリストたちの準備が進み、
更に、室内に仕掛けられたカメラが電池切れを起こす。
パンが全部売れれば、
少女が立ち去ることから、
現地の工作員がパンを買い上げようとするが・・・

時間との闘いの中、
それぞれの立場、
それぞれの信念がぶつかり合う、人間ドラマ
堪能した

ドローンと言っても、
撮影用に使う小規模のものではなく、
ちゃんとした攻撃機、
ただ無人というだけの違いだ。

つまり、戦闘するのは無人の飛行機であり、
会議室の面々は
誰一人、危険な現場にいるわけではない。
それが「安全な場所からの戦争」と非難される理由だ。
現代の戦争がいかなるものかと、
改めて考えさせられる。
殺戮作戦の決断を誰が下すのか、
ボタンを押す権限を誰が持っているのか、
軍人か、政治家か、法律家か。
その判断が正しいと誰が言えるのか、
そもそも自爆テロは何故起こり、
無辜の市民がどうして犠牲にならなければならないのか。
投げかける問題は大きい。

パウエル大佐を演ずるヘレン・ミレン

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ベンソン中将を演ずるアラン・リックマン

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ドローンパイロットを演ずるアーロン・ポールなどが好演。

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監督は南アフリカ出身で、
「ツォツィ」で2006年アカデミー賞外国語映画賞を受賞した
ギャヴィン・フッド
プロデューサーに「英国王のスピーチ」の
俳優コリン・ファースが名前を連ねる。

5段階評価の「4.5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/lvPVwwoWak4

TOHOシネマズシャンテ(日比谷)等で上映中。


稲田防衛相の靖国神社参拝  政治関係

稲田朋美防衛相は29日午前、
靖国神社を参拝した。

稲田氏の参拝は今年8月の防衛相就任後、初めて。

参拝後、稲田氏は記者団に
「今の平和な日本は
祖国のために命をささげられた方々の
尊い命の積み重ねの上にある。
未来志向に立って
しっかりと日本と世界の平和を築いていきたい
という思いで参拝した」
と説明した。
「防衛大臣 稲田朋美」と記帳し、
玉串料は私費で支払ったという。

稲田氏は安倍晋三首相の米ハワイ・真珠湾訪問に同行し、
28日に帰国したばかり。
稲田氏はこのことに触れ、
「最もし烈に戦った日本と米国が
今や最も強い同盟関係にある。
真珠湾訪問も報告してきた」
と語った。

自衛隊の統率を含む防衛政策の担当閣僚が
靖国神社を参拝したことで、
安倍政権の右傾化を警戒する
中韓両国を刺激するのは避けられない。
特に、北朝鮮が核実験や
弾道ミサイル発射など挑発行為を繰り返す中、
連携強化が急務となっている
韓国との防衛交流に支障を来す恐れもある。

これに関し、稲田氏は
「いかなる歴史観に立とうとも、
祖国のために命をささげた方々に対し、
感謝と敬意と追悼の意を表するのは
どの国でも理解していただけるものだ」
と主張した。

稲田氏の靖国参拝について、
首相は神奈川県茅ケ崎市で
「ノーコメントだ」と記者団に述べた。

弁護士出身の稲田氏は
保守的な政治信条で知られ、
例年8月15日の終戦記念日に合わせて
靖国神社を参拝してきたが、
就任直後の今年はアフリカ北東部のジブチでの
自衛隊部隊視察を理由に参拝を見送っていた。

韓国政府は直ちに稲田氏の参拝を批判。
中国の反発も必至で、
北朝鮮の核・ミサイル開発をにらんだ
韓国との防衛協力にも影響しそうだ。

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参拝後、記者団との一問一答は次の通り。

──記帳は

「『平成28年12月29日 防衛大臣 稲田朋美』
と記帳いたしました」

──玉串料は

「玉串料は私費です」

──公人としての参拝か

「防衛大臣である稲田朋美が
一国民として参拝したということです」

──このタイミングとなった理由は

「いつも申し上げていることですけども、
今の平和な日本は、国のために、
祖国のために命をささげられた方々の、
その貴い命の積み重ねの上にあるということを
私は忘れたことはありません。
戦後70年に安倍晋三首相が談話を発表され、
今年は原爆を投下した国の大統領が広島を訪問され、
また、真珠湾に首相が行かれ、
慰霊の言葉を述べられました。
私も同行したわけですけども、
最も熾烈に戦った日本と米国が、
いまや最も強い同盟関係にある。
どのような国であったとしても、
敵方として分かれた方々、国であっても、
例えばミズーリ号には私は行きましたけれども、
たくさんの特攻の青年たちの遺書と写真が飾ってあります。
また、飯田房太中佐の慰霊碑は
米国方が建てたものであります。
その飯田さんは真珠湾攻撃で引き返して、
基地に撃墜した方ですけれども、
米国方でしっかり慰霊をしております。
そういったことなども報告をし、
未来志向に立ってしっかりと
日本と世界の平和を築いていきたいという思いで
参拝をしました」

──中国や韓国の反発が予想される

「私は、いかなる歴史観に立とうとも、
いかなる敵味方であろうとも、
祖国のために命をささげた方々に対して
感謝と敬意と追悼の意を表するのは、
どの国でも理解をしていただけるものだと考えております」

──参拝について首相と真珠湾で話をしたか

「しておりません」

──真珠湾での慰霊と靖国神社参拝は意味合いが異なる

「私自身は、さきほども申し上げました通り、
いかなる歴史観に立とうとも、
また敵味方として熾烈に戦った国同士であったとしても、
祖国のために命をささげられた方々の
その命の積み重ねの上に今の平和な日本がある、
そして、そういった方々に
感謝と敬意と追悼の意を表するということは
理解いただけると思います」

──心の中には特攻隊員で訓練中に亡くなった
  おじへの思いもあるのか

「そうですね。
おじは21歳で、しかも、
終戦直前の5月25日に特攻隊員として訓練中に亡くなり、
そして靖国神社に合祀されております。
そういった将来ある青年たちが、
決して日本は勝つと思っていたわけではないけれども、
自分たちの出撃したことによって、
日本の未来を、平和な日本というものを
描いていたと思います。
そういった青年たち、
また戦争で家族とふるさとと
国を守るために出撃した人々の
命の積み重ねのうえに
今の平和な日本があるということを忘れてはならないし、
忘恩の徒にはなりたくないと思っています」

──8月15日に参拝できなかったことへの後悔もあるのか

「それはありません。
私は今までも海外視察を優先して
8月15日に参拝しなかったのは、
今までも、8月15日にこだわっていたわけではありません。
そして、このタイミングでというのも、
真珠湾の訪問のことや、
また、さまざま公私ともにあったことなども
報告をしてきたところです」

──真珠湾訪問が今回の訪問のきっかけになったのか

「いえ、そういうことではないです。
ただ、真珠湾や飯田房太さんの慰霊であったり、
またミズーリ号にも行ってきましたが、
そういったことなども報告をしたということです」

──大臣になって初めての参拝か

「そうです」


このどこが問題だというのだろうか
中国と韓国さん。
あなたの国にも
国のために戦争で命を捧げた人たちへの慰霊施設はあるだろう。
それと同じ、ということが
なぜ分からないのか。

いや分かろうとしないのだろう。

「私は、いかなる歴史観に立とうとも、
いかなる敵味方であろうとも、
祖国のために命をささげた方々に対して
感謝と敬意と追悼の意を表するのは、
どの国でも理解をしていただけるものだと考えております」

理解できないのは、
最初から理解しようとせず、
政治利用しようと考えているからだ。
日本を貶める唯一の切り札
70年以上前の戦争のことを言っておけば
有位に立てると思っているからだ。

なにかといえば、
安倍首相を「右傾化」だの「軍国主義」だの言うが、
安倍首相ほど、「戦争を起こしてはいけない」
と思っている人はないだろう。
というか、日本人全体がそう思っている

75年前、ABCD包囲網に囲まれて、
戦争に踏み切ったのは、
日清、日露の戦勝からの奢りがあったからだ。
いざ戦争をしてみて、
国土は焦土と化し、
戦争の悲惨さは日本国民の中に染みこんだ。
領土を広げたところで、
何の得もない。
逆に何十年も前のことで
いつまでもいつまでも難癖をつけられる。
戦争などまっぴらだ
という思いは国民のDNAの中に入り込んでしまった。

安保法制だの何だのが
戦争をするための法律というが、
あれは、戦争を起こさないため
環境整備だという観点を少しも理解しようとしない。

日本の周囲には、
軍事費を毎年毎年増大させている国だの
核とミサイルで恫喝している国があるのだ。
その国とことを起こさないためには、
米国と連携していく他はない。
その連携をスムーズにするための法整備なのに、
まるで戦争準備のための法律だと曲解する。

最初から理解する気のない国には
理解させる必要はない

日本は粛々と整備を整えればいい。

アバマ大統領の広島訪問、
安倍首相の真珠湾訪問、
そこで「昨日の敵は今日の友」となりうる
「寛容と和解」のメッセージを世界に発信することができたのは、
安倍首相の外交的勝利だ。

第2次安倍内閣が発足した時のアメリカの反応はひどかった。
ニューヨークタイムスは
安倍首相を「右翼ナショナリスト」
「歴史修正主義者」と断定する、偏向報道
ワシントンはその影響を受け、
安倍首相に対して警戒感を持った。
それを粘り強い外交で変化させ、
オバマ政権の「色眼鏡」を取り除いたのだ。

平成27年の米上下院合同会議での演説により、
アメリカの雰囲気が変った。
安倍不信をいいたてる中国韓国に対して、
「どうも、それは違うようだぞ」
という見方が支配するようになってきたのだ。

そして、今年の広島と真珠湾。
そこで発信した「寛容と和解」のメッセージは、
実は、今のテロ吹き荒れる世界に必要なものだということを
分かる人は分かるだろう。
分からない人は、最初から分かろうとしない人なのだ。

私はこの4年間、
安倍首相で本当に良かったと思う。
他のリーダーたちのように、
右顧左眄し、中韓の顔色ばかりうかがっている人が
トップだったら、日本人の誇りは保てなかった。

昨年の安倍首相の戦後70年談話の中で、
安倍首相は、こう言っている。

「日本では、戦後生まれの世代が、今や、
人口の八割を超えています。
あの戦争には何ら関わりのない、
私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、
謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」

談話の趣旨は、
過去を反省するだけではなく、
戦後の日本の変化を強調し、
歴史の教訓を今後にどう生かすか

ということだった。

今回の真珠湾でのスピーチは、
その延長上に成り立っている。

安倍首相の戦後70年談話についてのブログは、↓をクリック。

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20150814/archive


安倍首相のスピーチ  政治関係

本日朝(日本時間)、
安倍晋三首相は、ハワイでオバマ米大統領
最後の首脳会談を行った後、
真珠湾のアリゾナ記念館を訪れて献花、
その後、スピーチを行った。

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アリゾナ記念館は、
アメリカ合衆国ハワイ州オアフ島にある慰霊施設。

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1941年12月7日(ハワイ時間)の
日本海軍による真珠湾攻撃で、
乗組員1177名のうち1102名が死亡し
撃沈された戦艦アリゾナ及びその乗組員を追悼するとともに、
真珠湾攻撃自体を記念する施設だ。

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記念館は沈没した戦艦アリゾナの真上に建設されている。

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両首脳のスピーチは、次のとおり。

安倍総理大臣のスピーチ

オバマ大統領、ハリス司令官、ご列席の皆様、
そして全てのアメリカ国民の皆様、
パールハーバー、真珠湾に今、
私は日本国総理大臣として立っています。

耳を澄ますと、寄せては返す波の音が聞こえてきます。
降り注ぐ陽の柔らかな光に照らされた、
青い、静かな入り江。
私の後ろ海の上の白いアリゾナ・メモリアル。
あの慰霊の場を、オバマ大統領とともに訪れました。
そこは私に沈黙を促す場所でした。
亡くなった軍人たちの名が記されています。
祖国を守る崇高な任務のため、
カリフォルニア、ミシガン、ニューヨーク、テキサス、
様々な地から来て乗り組んでいた兵士たちがあの日、
爆撃が戦艦アリゾナを二つに切り裂いた時、
紅蓮の炎の中で死んでいきました。

75年がたった今も、
海底に横たわるアリゾナには、
数知れぬ兵士たちが眠っています。
耳を澄まして心を研ぎ澄ますと、
風と波の音とともに、
兵士たちの声が聞こえてきます。

あの日、
日曜の朝の明るく寛いだ、弾む会話の声。
自分の未来を、そして夢を語る若い兵士たちの声。
最後の瞬間、愛する人の名を叫ぶ声。
生まれてくる子の幸せを祈る声。
一人ひとりの兵士に、
その身を案じる母がいて、父がいた。
愛する妻や恋人がいた。
成長を楽しみにしている子どもたちがいたでしょう。
それら全ての思いが絶たれてしまった。
その厳粛な事実を噛みしめる時、思う時、
私は言葉を失います。
その御霊よ安らかなれ。
思いを込め、私は日本国民を代表して
兵士が眠る海に花を投じました。

オバマ大統領、アメリカ国民の皆さん、
世界の、さまざまな国の皆さま。
私は日本国総理大臣として、
この地で命を落とした人々の御霊に、
ここから始まった戦いが奪った、
全ての勇者たちの命に、
戦争の犠牲となった、数知れぬ無辜の民の魂に、
永劫の、哀悼の誠を捧げます。

戦争の惨禍は、二度と繰り返してはならない
。私たちは、そう誓いました。
そして戦後、自由で民主的な国を創り上げ、
法の支配を重んじ、
ひたすら不戦の誓いを貫いてまいりました。
戦後70年間に及ぶ平和国家としての歩みに、
私たち日本人は静かな誇りを感じながら、
この不動の方針をこれからも貫いてまいります。
この場で、戦艦アリゾナに眠る兵士たちに、
アメリカ国民の皆様に、世界の人々に、
固いその決意を、
日本国総理大臣として表明いたします。

昨日、私はカネオへの海兵隊基地に、
一人の日本帝国海軍士官の碑を訪れました。
その人物とは、真珠湾攻撃中に被弾し
母艦に帰るのをあきらめ引き返し戦死した戦闘機パイロット、
飯田房太中佐です。
彼の墜落地点に碑を建てたのは、
日本人ではありません。
攻撃を受けた側にいた米軍の人々です。
死者の勇気を称え、石碑を建ててくれた。
碑には、祖国のため命を捧げた軍人への敬意を込め
「日本帝国海軍大尉」と、当時の階級を刻んであります。

“The brave respect the brave“、
「勇者は、勇者を敬う」。
アンブローズ・ビアスの詩は言います。
戦い合った敵であっても敬意を表する。
憎しみ合った敵であっても理解しようとする。
そこにあるのは、アメリカ国民の寛容の心です。

戦争が終わり、
日本が見渡す限りの焼け野原、
貧しさのどん底の中で苦しんでいた時、
食べるもの、着るものを惜しみなく送ってくれたのは、
米国であり、アメリカ国民でありました。
皆さんが送ってくれたセーターで、ミルクで、
日本人は未来へと命をつなぐことができました。
そして米国は、日本が戦後再び
国際社会へと復帰する道を拓いてくれました。
米国のリーダーシップの下、
自由世界の一員として、
私たちは平和と繁栄を享受することができました。

敵として熾烈に戦った私たち日本人に差しのべられた、
こうした皆さんの善意と支援の手、
その大いなる寛容の心は、
祖父たち、母たちの胸に深く刻まれています。
私たちも覚えています。
子や孫たちも語り継ぎ、決して忘れることはないでしょう。

オバマ大統領とともに訪れた、
ワシントンのリンカーン・メモリアル。
その壁に刻まれた言葉が、私の心に去来します。

「誰に対しても、
 悪意を抱かず、
 慈悲の心で向き合う」
「永続する平和を、
 我々全ての間に打ち立て、
 大切に守る任務を、
 やりとげる」。
エイブラハム・リンカーン大統領の言葉です。
私は日本国民を代表し、
米国が、世界が日本に示してくれた寛容に
改めてここに心からの感謝を申し上げます。

あの「パールハーバー」から75年。
歴史に残る激しい戦争を戦った日本と米国は、
歴史にまれな、深く強く結ばれた同盟国となりました。
それは今までにも増して
世界を覆う幾多の困難に共に立ち向かう同盟です。
明日を拓く希望の同盟です。

私たちを結びつけたものは、寛容の心がもたらした、
“The Power of reconciliation“、
「和解の力」です。
私がここパールハーバーで、
オバマ大統領とともに、
世界の人々に対して訴えたいもの。
それは、この和解の力です。

戦争の惨禍は、未だに世界から消えていません。
憎悪が憎悪を招く連鎖は無くなろうとしません。
寛容の心、和解の力を、
世界は今こそ必要としています。
憎悪を消し去り、
共通の価値の下、
友情と信頼を育てた日米は、
今こそ寛容の大切さと、和解の力を、
世界に向かって訴え続けていく任務を帯びています。
日本と米国の同盟は、だからこそ希望の同盟なのです。

私たちを見守ってくれている入り江は、
どこまでも静かです。
パールハーバー、真珠の輝きに満ちた、
この美しい入り江こそ、
寛容と、そして和解の象徴です。
私たち日本人の子どもたち、
そしてオバマ大統領、皆さんアメリカ人の子どもたちが、
またその子どもたち、孫たちが、
そして世界中の人々が、
パールハーバーを和解の象徴として
記憶し続けてくれる事を私は願います。
そのための努力を、私たちはこれからも、
惜しみなく続けていく。
オバマ大統領とともに、ここに、固く、誓います。

ありがとうございました。


オバマ大統領のスピーチ

安倍総理大臣、
本日の総理のご出席と心のこもったステートメントは
和解の力を証明する歴史的な行為であり、
米国民を代表して感謝申し上げます。
また、米国と日本の人々の同盟関係は、
戦争による最も深い傷でさえも
友情と恒久平和に取って代わられることを
私たちに想起させるものであり、
謝意を表します。
ご列席の皆様、米軍関係者、そしてそのなによりも
真珠湾攻撃の生存者の方々及びその大切な人へ。アロハ!

米国人、特にハワイを郷里とする者にとって、
この真珠湾は神聖な場所です。
未だ嘆き悲しむこの湾に献花し、
また花びらを投げ入れるとき、
私たちは2400名を超える
米国の愛国者たち、
天の帆桁で永遠の敬礼をする父や夫、妻や娘を思います。
毎年12月7日になると
いつもより少し背筋を正すオアフの守護者に敬礼し、
そしてここで75年前に示された勇姿に思いを馳せるのです。

12月のその日、夜が明けると、
楽園はこれまでにないほど魅力的でした。
水は温かく。そして現実と思えないほどに青く。
水兵たちは食堂で食事をしたり、
教会に行く準備をしたり、
自由を胸にこぎれいな白い半ズボンと
Tシャツを身につけたりしていました。
湾では、船舶がきちんと列をなして停泊していました。
カリフォルニア号、メリーランド号、オクラホマ号、
テネシー号、ウエストバージニア号、ネバダ号、
そしてアリゾナ号のデッキでは
海軍の音楽隊がチューニングをしていました。

その朝、兵士の肩に記された階級は、
彼らの胸に宿る勇気ほどに意味をなしませんでした。
彼らはこの海において、
あらゆる手を尽くして自己を防衛しました。

あるアフリカ系アメリカ人の食堂の給仕係は、
普段であれば清掃の役割しか与えられていなかったが、
この日、司令官を安全な場所に運び、
そして弾薬がなくなるまで地対空砲を打ち続けました。

私たちは、ウエストバージニア号の1級砲撃手であった
ジム・ダウニングのようなアフリカ人を誇りに思います。
真珠湾に急行する前、
彼の新妻は彼の手に聖書の言葉の一節を握らせました。
「永遠なる神は女の拠り所、その永遠なる胸に抱かれて」
というものです。
ジムが戦艦を守ろうと戦っている最中、
彼は同時に倒れた者たちの名前を記録しました。
家族にその事実を伝えることができるようにするためです。
彼は言いました「人がする当然のことです」と。

私たちはハリー・バンのようなアメリカ人を記憶しています。
彼はホノルル出身の消防士で、
荒れ狂う火を前にし、最後の命を取り綴り、
燃える戦闘機の鎮火に取り組みました。
彼はパーブル・ハート勲章(名誉負傷)を
民間人の消防士として唯一受賞した人です。
私たちは、2時間以上もの間、
50口径のマシンガンを撃ち続け、
20回以上も負傷し、
最も高位の軍人の勲章である名誉勲章を受章した
ジョン・フリン上等兵層のようなアメリカ人に敬意を表します。

私たちは、戦争のもっとも永続的な価値に対し
如何に挑戦するかについて思いを馳せます。
日系アメリカ人が如何にして戦争期間中、
自由を奪われたのでしょうか。
米国史上最も勲章を受章した部隊は、
日系アメリカ人U世の舞台である
第100歩兵大隊と442連隊でした。
私の友達でハワイ出身の上院議員、
ダニエル・イノウエさんも所属していました。
彼はずっとここに住んでいます。
そして私は上院議員になったとき、
彼の友人であることを誇りに思いました。
彼は名誉勲章、そして自由勲章を授与されました。
そして彼の世代で最も偉大な政治家の一人です。

第二次世界大戦における
米国の最初の戦場である、ここ真珠湾で、
私たちの国は奮起しました。
多くの点で、この場所でアメリカ人は成熟したのです。
私の祖父母を含め、
多くの世代のアメリカ人は戦争を求めたりしませんでした。
しかしながら、彼らは戦争から身を背けることを拒否し、
経営の場や工場においてその役割を果たしました。
そして75年後、
誇り高い真珠湾攻撃の生存者の層は、
時間の経過とともに薄くなってきています。
この場で私たちが思い出す勇者は、
私たちの国の心に永遠に生き続けます。
真珠湾、そして第二次大戦の退役軍人の皆さん、
立ち上がるか手を挙げていただけますでしょうか。
感謝の心に富むこの国は、
皆さんに御礼申し上げます。

国の本質は、戦時において試されますが、
平時において定義されます。
人類史上最も恐ろしい期間の一つ、
太平洋を渡り悲惨な戦闘により、
何百万もの命が奪われた時期の後、
米国と日本は何十年もの間、
友好と平和を示しています。
私たちの同盟は、両国をより繁栄させています。
同盟は、新たな世界大戦を予防し、
何十億もの人々とを貧困から救った
国際秩序の強化に貢献しています。
そして本日、米国と日本の同盟は、
共通の利益によって結ばれ、
共通の価値に基づき、
アジア太平洋の平和と安定の礎となっており、
世界の進歩を推進する力となっています。
実際、私たちの同盟は
これまでにないほど強固なものとなっています。

よい時も悪い時も、
私たちはお互いを助けるためにいます。
5年前、津波が日本と原子炉を襲い掛かり、
福島の原子炉が融解したとき、
米軍人は私たちの日本の友人を助けました。
世界の中で米日はアジア太平洋地域と世界における
安全を強化するために協力しています。
たとえば、海賊を後退させ、疾病と戦い、
核兵器の拡散を遅らせ、
戦時の領土において平和を維持しています。

そして本年前半には、
真珠湾の近郊で日米両国の人々は、
24か国とともに世界で最大の海上軍事訓練を実施しました。
この訓練にはハリー・ハリス司令官が率いる
米太平洋軍も参加しました。
ハリス司令官は、米国人の海軍兵を父に、
日本人を母に持っています。
ハリーは横須賀で生まれましたが、
それは彼のテネシーなまりからわからないでしょう。
ハリー、あなたの誇りあるリーダーシップに感謝します。

このような観点から、
本日私たちがここにいること、
安倍総理がここにいることは、
国と国、そして人と人との間に
何が可能であるかということを気づかせてくれます。
戦争は終わります。
もっとも厳しい敵対関係にあったものが、
最も強い同盟関係を結ぶことができます。
平和という果実は、
戦争による略奪をはるかに上回るものです。
これが真珠湾のゆるぎない事実です。

この場所で、
憎しみの炎が最も強く燃え盛る時も、
部族間の争いがあるときも、
私たちは内向きになったり、
私たちとは異なる者とを悪のように扱うといった欲求に
抗わなければならないということを想起します。
ここで払われた犠牲や戦争による怒りは、
私たちの皆の中にある共通項を探すことで
思い出させてくれます。
これは、日本の友人の言葉を借りれば
「オタガイノタメニ」、つまり
「相手とともにあって、相手のために尽くす」よう
努力することを求めています。
これがミズーリ号に乗船していた
ウィリアム・キラハン船長による教訓です。
彼は、彼の船が日本人のパイロットによって攻撃を受けた後も、
同パイロットの遺体を米国兵が縫製した日本の国旗で包み、
軍葬儀の礼を行うよう指示しました。
そしてこれは何年もあとになって真珠湾を再訪し、
米国海軍のラッパ手と友人となり、
同ラッパ手に軍葬の際に流される曲を演奏してもらうように依頼し、
毎月2本のバラの花
(1本は米国の犠牲者に、もう1本は日本の犠牲者に)
をこの記念館に飾ることとなりました。
日本人パイロットによる教訓でもあります。

これは、2人の人がいかにもっとも平凡な方法で
学ぶことができるかという点についての教訓です。
多くの米国人が東京で勉強し、
日本の若者も全米で勉強しています。
日米の科学者はともに、がんに取り組み、
気候変動と闘い、星を探査しています。
またこれはマイアミのスタジアムを明るくし、
米国人と日本人が共有する
誇りによってともに元気づけられている
野球のイチロー選手についてもいえることです。
米国人と日本人は平和と友情で結ばれています。

それぞれ国として、そして人として、
私たちは私たちが引き継ぐ歴史を選ぶことはできません。
しかし、そこからどのような教訓を学び、
そして歴史を使って
どのように私たちの未来の計画を立てるかということは
選ぶことができます。

安倍総理、私は友情の精神に基づき、
あなたをここに歓迎します。
それは日本人の人々が常に
私を歓迎してくれたことと同様です。
私たちが協働することによって、
世界に対して、前に進むにあたっては
戦争よりも平和によって
多くのことを勝ち得ることができる。
そして報復よりも和解が
より多くの報償をもたらすという
メッセージを送ることができることを期待します。

この静かな港で、
私たちは亡くなられた方々に対して敬意を表し、
我々両国が友人として勝ち得たすべてに対して
感謝を表明します。
神が戦没者をとこしえの胸に抱え、
海が退役軍人を見守り、
皆が私たちのために番をしてくださいますように
私たちに神の御恵みを。


敵対し、殺し合った者が、
和解し、友情を獲得する。
そして、二度と戦争を起こさないという
不戦の誓いをし、
戦争よりも平和によって
多くのことを勝ち得ることができる、
というメッセージを世界に発信する。

このような気高い内容のスピーチです。

これに対する国内の反応。

広島県の呉市海事歴史科学館
(大和ミュージアム)館長の戸高一成さん(68)は
「両国の責任者が、
直接真珠湾で慰霊したことに意味があり、
非常に良かった」
と評価。
首相が謝罪しなかった点は、
「戦争はどちらかが一方的に悪いわけではない。
謝罪ではなく反省するもの」
と指摘。
両首脳の未来や次世代に向けた演説を含め、
今回の訪問を「歴史的に大きい一つのアピールになった」と称賛。

一方、東京大空襲・戦災資料センター館長で
作家の早乙女勝元さん(84)は、
演説で強調された同盟関係について
「純粋な平和同盟ではなく軍事同盟だ」と懸念。
沖縄県で再開された普天間飛行場の移設工事に触れ、
「『和解』や『寛容』という言葉が空虚に聞こえる。
日本が侵略と植民地支配を繰り広げた
中国や朝鮮半島への謝罪が先ではないか」
と疑問を呈した。

中国や半島への謝罪は、
既に何回となくしていることは忘れているらしい。

米メディアでは「謝罪すべき」との声もあるものの、
一定の評価を与えている。

韓国のメディアは、
「日米同盟の土台を揺さぶろうとしている
ドナルド・トランプ次期大統領を
意識した行動であることは明らか」
とし、
「韓国や中国など
日本の侵略で途方もない被害を受けた
アジア諸国に対する礼儀ではない。
米国だけに和解のジェスチャーを送れば
目の前の国益だけを追う姑息な行為だとする非難を免れがたい」
と評論。

先日も韓国の現状を報道する番組で、
韓国のいい歳の人が
「日本はまだ謝罪をしていない」
と言っていたが、
何度も謝罪をし、
謝罪だけでなく、
国家予算の3倍にもなる
経済援助をしたことなど、
すっかり忘れているらしい。

中国のメディアは、
安倍首相が真珠湾で謝罪せず、
オバマ氏も広島訪問時に
原爆投下について謝罪しなかったことを引き合いに、
「もし謝罪がないのであれは、
日本政府と米国政府は、
単に日米同盟強化に対する
国民からの支持を固めるための
ショーを行っているにすぎない」
などと批判。

戦争責任に対する「謝罪」をどうしてもさせたいようだ。

しかし、今回の真珠湾訪問の意義は、
スピーチ会場にいた、
75年前の攻撃を生き延びた
元米兵3人の言葉に集約されるだろう。

スターリング・ケールさん(95)は、
「とてもうれしい。75年がたち、
日本の首相が来てくれたことに感謝している」
退役軍人の一部には謝罪を求める声もあるものの、
「謝罪は必要ない。
ここに来て献花をしてくれたことが謝罪と同じ意味になる」
と評価。
各国メディアの記者に囲まれたケールさんは
首相が攻撃を謝罪しなかったことを問われると、
「申し訳なかったと言ってもらうより、
行動で示してもらった方がいい。
『申し訳ない』という言葉は
砂のように消えてしまう。
言葉は2分で忘れる。
行動は永遠に記憶に残る」
と断言。

エベレット・ハイランドさん(93)は
「首相が来てくれてうれしい。
(日米は)かつては敵同士だったが、
今は友人だ」
と笑顔を見せ、
「謝ることは何もない。
戦争になればいつも人は死ぬ」
と語った。 

もう一人の生存者、アル・ロドリゲスさん(96)は
「彼はありがとうと言い、ハグしてくれた。
期待していた以上のことをしてくれた」
と歓迎。
「訪問を楽しみにしていたので、
ありがたいことだ。
私たちは和解した」
といい、謝罪の必要性については、
「なぜ謝罪する必要があるのか。
日本に原爆を落としたのはわれわれの方だ」
と語った。

何年たっても、
何度謝罪しても
「もっと謝罪しろ」
という中国韓国と
「謝罪は不要」という
大人の対応のアメリカ。
この違いは何だろう。


私がアリゾナ記念館を訪れた時のブログは、↓をクリック。

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20120625/archive

真珠湾攻撃を扱った映画「トラ・トラ・トラ!」の紹介は、↓をクリック。

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小説『オルファクトグラム』  書籍関係

[書籍紹介]

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オルファクトグラムとは何のことかと調べたら、
「オルファクトメーター」という、
嗅覚検査キットの中の
検査結果の記録用紙のことだという。
まだ、他の意味もあるかもしれないが、
これくらいしか見つからなかった。

いずれにせよ、
嗅覚に関わる何かには違いない。

で、井上夢人のこの小説、
嗅覚を巡る特殊能力の話である。

友達とバンドを組んでいる片桐稔は、
その自主製作CDを届けに行った姉の家で殺人事件に遭遇する。
姉の千佳が殺され、
現場にいた犯人に後頭部を殴打されて気を失う。

1カ月後、意識不明から目覚めた後、
稔に異常が襲う。
匂いが視覚化されてしまったのだ。
稔の周囲をクラゲのようなものが漂っている。
形も色も違った無数のクラゲ。
やがて稔は、それが周囲の物が持っている匂いであり、
人も物も特有な色合いと形状を持った
匂いの粒子を発散していることに気づく。
原因は脳にたまった血液を抜いた脳の手術の結果、
と思われるが、子供時代に亡くなった双子の兄の徹にも
同じ現象が現れていたことから、遺伝による可能性もある。

説明がつかなくて、医者にも言えず、
まず話したのは、バンド仲間の恋人のマミとホーリューだった。
二人の前で、それぞれが触ったマッチの軸を言い当てた稔は、
二人を納得させ、
地面の匂いを四つんばいになって嗅がなくてもいいように、
棒の先にファンを付けた「臭探棒」を作り、
それで、失踪したバンド仲間のミッキーの足跡を探り、
ある場所で人と待ち合わせをし、
車に乗ったことを探り当てる。

姉が殺された現場を再び訪れた稔は、
犯人らしい人物の匂いを確定し、記憶に留める。
そこで義兄から聞かされたのは、
姉を殺したと同じ手口で
殺人事件が再び起こったということだった。

ミッキーの捜索に
テレビの力を借りたらどうかというホーリューの提案で、
稔はつてを頼ってテレビ局を訪ねる。
そこで披露した稔の臭覚能力に仰天したプロデューサーは、
その検証のため、大学の研究室に稔を連れていく。
そこで判明したのは、
稔の嗅覚は犬以上で、
機械で検知する域を越えているのだという。
そして、脳の視覚域と嗅覚が直結して、
匂いが映像として認識されているのだろう、
ということが分かる。

その一方、連続殺人の犯人は
物販配送の仕事を活用して、次々と獲物を追い、
連続殺人の被害者が
全て自社商品の配送先だと気づいた上司を殺す。
稔の特殊能力を知った警察は、
その殺人現場に稔を連れて行くが、
稔は、前の事件と同じ犯人の匂いを検知するとと共に、
殺された女性が
ミッキーと待ち合わせしていた人物だと匂いで特定する。
その物販会社に行った稔は、
タイムカードの匂いから犯人を特定するが、
その際、犯人に顔を見られてしまう。

稔の後をつけた犯人は、
マミを拉致して逃亡する。
稔の嗅覚による追跡が始まる・・・

というわけで、匂いについて特殊能力を発揮する人物が
連続殺人の謎を解いていく過程は、
まるで専門の技能を持った職人
その技能を発揮して問題を解決していくように思えて、
興味津々だ。
テレビ局の人間、大学研究室のメンバー、
警察の刑事たちが
稔の能力を疑いながら、
次第にその能力を頼る形になっていく経過も面白い。
面白いどころか、わくわくしてしまう。
完全に作者の術中にはまっている感じだ。

なにしろ稔の嗅覚と見える浮遊物で、
相手の生活環境、
たとえば犬を飼っていて、
その日の朝、頭をなでて、
犬が前足をその人の胸にかけたことさえ分かってしまう。
犬の匂いが濃厚に発する場所で分かるのだという。
口から発する匂いで、
食べたものを特定するのは簡単だし、
奥さんの匂いと緊張の気配から
夫婦喧嘩まで見抜いてしまうというのだから、
超能力といえば超能力だ。

この小説は、
そのような超能力をひけらかすのではなく、
物語と添って、
その能力が事件解決に役立つところが、
興味を引きつける。
犯人を追い詰め、
逮捕に至る過程でも、
稔の能力が編み出した方策が使われるのも爽快だ。

稔の能力に対する研究室での解析もていねいで、
様々な機能的疑問に対する回答も適切だ。
その叙述は一点の手抜きもない

文庫本上下で1047ページもある大作だが、
無理なく、弛緩なく、ぐいぐいと読ませる。
異常な創作上の設定を、
読者に納得させるだけの取材を
しっかりしていることをうかがわせる。
まさに井上夢人が
一流のストーリーテラー
であると再認識させる一篇。
おススメである。

なお、本作は、WOWOWでドラマ化され、
2002年2月7日に放送されたが、
私は未見。
ビデオもVHSしかない。





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