『東慶寺花だより』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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昨日のブログで紹介した
映画「駆け込み女と駆け出し男」原作がこれ。
味のある原題を
映画用にコメディっぽく改題したのは、どんなものか。

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井上ひさしは、
鎌倉に住んでいた縁もあって、
そこを舞台にした短編連作「東慶寺花だより」の連載を
「オール読物」に平成10年4月号から
平成20年5月号まで不定期に連載。
平成22の井上ひさし氏の逝去により絶筆となり、遺作とされる。
平成22年11月30日に単行本化。
平成25年1月には、歌舞伎座で
新作歌舞伎として上演された。

全15編の短編連作で、
「梅の章 おせん」
「桜の章 おぎん」
「花菖蒲の章 おきん」
等、東慶寺に駆け込んで来た女に合わせて、
それぞれの季節の花の名前があしらわれるという趣向。
つまり、「花だより」なのだ。

全編を通じての主人公は中村信次郎、23歳。
彼の一人称で語られる。
信次郎は、江戸蔵前の町医者西沢佳庵のもとで
医者の見習いをしていたが、
一方で戯作者も志しており、
鎌倉東慶寺の御用宿「柏屋」に身を寄せ、
布団部屋にこもって戯作の執筆に苦吟している・・・・
という設定。

東慶寺に駆け込んだ女性は、
門前の御用宿に身柄を預け、
宿の主人が駈け込みに至るまでの事情を詳しく聞き出して、
寺役所に提出する書類を作る。
信次郎はそこで書記の役目をし、
その事情を書き取りながら、
駆け込んで来た女性がなぜそのようにしたかを探る
一話完結の短編ミステリーになっている。
と同時に、
縁を捨てて、自立しようとする
江戸時代の堅固な意志を持った女性像を描いてもいる。

全体にユーモラス薄口

妊娠の疑いのある(実は想像妊娠)おゆきの診立てを
寺の院代で高貴な出身の法秀尼とする会話など笑わせる。

「それで、あなたのお診立ては?」
「それがよくわからないのです。
石井さまは、その、なんといえばいいのか・・・
おゆきさんの身には、
口にはできないことがおこっていると、
そうおっしゃっておいででした。
けれども、わたしはおゆきさんが
口にはできないことをなさったとは、
とても信じられません。
なにしろ御山には
口にできないことをする折りも場所もありませんから・・・」
御三家の姫君さまで
院代さまのお相手をするのは骨が折れる。
口にできない言葉が多すぎる。
「・・・青松院のみなさまは、
おゆきさんが口にできないことをして、
口にできないからだになったのだと
噂なさっているようですが、
わたしは、おゆきさんが口にできないことをして、
口にできない体になったとは、
とても考えられません」
「さっきから同じことをいっていますよ」

その院代さまの法秀院は、
「寺法などはどうでもよろしい」と断言する。

「寺法というものはね、
寺のためにあるのではありませんよ。
悩んだり苦しだりしている人のために
寺があり、寺法があるんです」

まことに魅力的な人物である。

映画はこの中の何篇かを抽出してまとめてあるが、
小説より東慶寺内の様子の描写が多い。
また、柏屋の一人娘のお美代は映画では姿を消している。
宝井馬琴も小説には出て来ない。
また、宿の主人の源兵衛は男性で、
映画は樹木希林を出すためか、
無理矢理男名前の女主人にしている。

戯作者としての信次郎が
江戸に戻って成功する話まで持って行くのが
作者の意図だったと思われるが、
残念ながら、そうなる前に井上さんの生命の方が尽きてしまった。
映画は駆け込んだ女性の一人と結ばれ、
江戸に戻って宝井馬琴門下に入るところまでを描いている。

なお、東慶寺の境内に咲く四季折々の花の様子を伝える
小説から名前を取った「東慶寺花だより」というサイト↓がある。

http://tokeiji87.exblog.jp/



『駆け込み女と駆け出し男』  映画関係

〔映画紹介〕

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井上ひさしが晩年に執筆した時代小説「東慶寺花だより」を映画化。

鎌倉の尼寺・東慶寺が「駆け込み寺」とか「縁切寺」とか呼ばれて、
女性の側からの離婚がままならない江戸時代の
女性の逃避場所だとは知っていたが、
これにも様々な作法(寺法)があり、
たとえば、域内に体の一部どころか持ち物の一つでも投げ込まれれば、
駆け込み成立とか、
逃げて来た女性がそのまま寺に入れるわけではなく、
女性たちの聞き取り調査を行う御用宿の存在とか、
そこでの関係者を招いての離婚調停とか、
調停不成立の場合は
寺に2年間(足掛け3年、実質満2年)いて、禁欲生活を送れば、
強制的に夫に離縁状を書かすことが出来るとか、
寺の中の待遇が上げ金の額によって3段階に分かれているとか、
髪は短くする程度で、
尼僧になるわけではないとか、
寺での日常は読経、写経と武道訓練だとか、
いやはや初めて知ることばかりだった。

そういえば、さだまさしの歌にも
「今日、鎌倉へ行ってきました〜」で始まる
「縁切寺」という歌がありましたな。

http://www.dailymotion.com/video/x22oqtu_%E7%B8%81%E5%88%87%E5%AF%BA-%E3%81%95%E3%81%A0%E3%81%BE%E3%81%95%E3%81%97_music

ちなみに、縁切寺はもう一つ群馬県の満徳寺がある。

映画は縁切り寺に駆け込んだ女たちの様々なトラブルを
御用宿・柏屋に居候する
戯作者志望の医者見習い・信次郎が解決し、
女たちの人生の再出発を後押ししていく様子を描く。

男子禁制の尼寺であるがゆえに、
診察に出向く信次郎に課せられた様々な制約などが笑いを誘う。

深刻な内容にならず、
終始ユーモラスに描き、
それでいて、奥が深い内容だ。

俳優がなかなか良く、
信次郎を演ずる大泉洋が軽妙。
柏屋の女主人で男名源兵衛の樹木希林は、さすがのうまさ。
日本橋唐物問屋主人の妾・お吟を演ずる満島ひかりは、
妖艶にして粋な江戸の女を好演。
ろくでなしの遊び人亭主に愛想をつかした
腕のいい鉄練り職人のじょごの戸田恵梨香は、めざましい役作り。
その他、問屋主人の堤真一、御用宿の番頭の木場勝己
その女房のキムラ緑子など、
芸達者が演技を競う。

監督は原田眞人

水野忠邦の天保の改革の真っ只中、
質素倹約令が発令されている時の
江戸時代の風俗を描いて、
かつ現代に通じる、
中々の時代劇だった。

なお、明治になって、「縁切り寺法」が廃止されて、
東慶寺は縁切り寺ではなくなり、
尼寺でさえなくなった。
女性から離婚申し立てが出来、
しかも強い、現代の女性は幸福である。

5段階評価の「4」

なお、現代の駆け込み寺、
玄秀盛さんの主宰する
公益社団法人日本駆け込み寺
については、↓をクリック。

http://nippon-kakekomidera.jp/

タグ: 映画

住みやすい町ランキング  耳より情報

MONOCLE」(モノクル)は、
「世界で最も住みやすい25の都市ランキング」を発表した。
都市の経済面や社会面、機能面のみならず、
毎日の暮らしやすさや
人々に幸せをもたらす都市であるかどうかを、
MONOCLEが設定した指標をベースに評価したもの。

「MONOCLE」は、
ロンドンを拠点とするグローバル情報誌で、

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2007年タイラー・ブリュレによって創刊され、
国際情勢からライフスタイル、
アートなど感度の高い月刊誌として
世界中で展開されている。
近年は雑誌の枠にとらわれない、
プロダクツ、カフェ、ショップ運営、オンラインラジオなど
多岐に渡る活動で確固たる地位を築いている。

指標は、
犯罪率、医療制度、公立学校、景気、公共交通網といったもののほか、
緑地スペースの広さ、文化への取り組み、
日照時間、電気自動車の充電スポットの数、
新規ビジネスの立ち上げやすさ
といった項目も指標となる。
2014年は新しく“自由主義か規律を重んじるか”という指標も加わった。

ランキングは以下の通り。

1位 コペンハーゲン(デンマーク)
2位 東京(日本)
3位 メルボルン(オーストラリア)
4位 ストックホルム(スウェーデン)
5位 ヘルシンキ(フィンランド)

6位 ウィーン(オーストリア)
7位 チューリッヒ(スイス)
8位 ミュンヘン(ドイツ)
9位 京都(日本)
10位 福岡(日本)

11位 シドニー(オーストラリア)
12位 オークランド(ニュージーランド)
13位 香港(中国)
14位 ベルリン(ドイツ)
15位 バンクーバー(カナダ)

16位 シンガポール(シンガポール)
17位 マドリッド(スペイン)
18位 パリ(フランス)
19位 アムステルダム(オランダ)
20位 ハンブルグ(ドイツ)

21位 バルセロナ(スペイン)
22位 リスボン(ポルトガル)
23位 ポートランド(米国)
24位 オスロ(ノルウェー)
25位 ブリスベン(オーストラリア)

MONOCLEによると、東京
「巨大都市として経済面や文化面の恩恵がありつつ、
街の荒廃がない。
フード、ショッピング、アートは今まで以上に魅力的で、
大都市であるにもかかわらず、人々の親切心がある。
厳しい規制により空気はきれいで、
公共交通網が充実しており、
車は必需品ではなくオプション品としてとどまっている」
といった点が評価された。
一方で、パチンコ店の数や公共の場における喫煙の禁止、
労働時間過多といった点を改善すべきとしている。

確かに、巨大都市につきもののスラムが東京にはない。
「危険地帯」もなく、
深夜女性や子供の一人歩きが出来るのは、
安全の行き届いた町であることを示す。
交通網の発達も特徴で、
東京には「離れ小島」がない。

京都については
「学問からハイテク企業まで、
昔の首都としての役割にとどまらない都市。
毎年5000万人の観光客が訪れるが、
150万人が働く主要都市でもあり、
人々は歴史と現代の生活のバランスを保とうとしている。
街は安全で四季ははっきりしている。
街の中心に緑地を増やすとなお良い」
という。

福岡
「日本国内の小都市で独自路線を歩んでいる良い例。
犯罪率は低く、スモールビジネスが活性化しており、
自転車通勤が人気。
一方で増加する空き家の対策や、
中国などから流れ込む大気汚染の対策を講じるべき」
という評価を受けた。

ほとんどが欧州、豪州で占められたランキングで、
アメリカはポートランド一つという厳しさ。
イギリスなど一つも入っていない。
アジアは5つ。

その厳しい基準をクリアして、
日本の都市が3つも選出されたのは、
快挙と言っていいだろう。


『サラバ!』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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先の直木賞受賞作
候補5作のうち、1333枚と一番長い。

圷(あくつ)家の息子歩(あゆむ)の誕生から始まり、
父親のイラン赴任からの帰国、
再びエジプトへの赴任、
帰国後の父母の離婚と
事実上の一家離散と和解と再生を描く。

修行僧のような忍耐の人、父・憲太郎と
美人で華やかな母・奈緒子と
「猟奇的な」姉・貴子との4人家族。
それに最強の祖母と
奈緒子の二人の姉妹が物語の中心となる。

姉の貴子は小学校から中学にかけて不思議な行動を繰り返し、
ついには不登校児となる。
歩はエシプトで
エジプト人のヤコブと親友関係になる。
二人の間は「サラバ」という言葉でつながる。

エジプトから帰国後、父母は離婚、
おばの始めた新興宗教のようなものに姉ははまる。
歩は高校でサッカー部に入り、
須玖(すぐ)という親友を獲得する。
また、大学に入り、映画サークルで
鴻上という異性の親友を得る。
卒業後、歩はライターの仕事をし・・・

とこのへんでやめるが、
要するに歩の一人称で語られる
歩の成長物語
あるいは「自分探しの旅」だ。

読んでいて面白く、
作者の才能はあますところなく感ずるが、
描かれた彷徨は
あまりに幼稚だ。
高校生や大学生の性の遍歴など、読みたくもない。

30過ぎになってもライターもどきをしている歩の生活は
後になればなるほど色褪せて来る。
結局、「書きたい」で終わるのは、
いい気なもんだ、と感じる。

父母の造型、中でも姉の造型はユニークで
物語を弾ませるが、
終盤のものわかりの良さはどうなんだろう。

才気を感じさせ、
読んでいる時は面白いが、
読み終えてみれば、
何とも言えない割り切れなさが残る作品だった。

才気ゆえにめでたく直木賞受賞作となったが、
選考委員の選評は次のとおり。

伊集院静
新しいもの、新しい人はまぶしいのである。
まぶしさに思わず、目を細めても
何やらどんどんページをめくる力がある。
こんなにふうにまぶしくて力強い小説を読んだのは
ひさしぶりだ。
新しい人は、新しい世界と、
まぶしい光を背負ってあらわれるらしい。

林真理子
欠点の多い作品だ。
しかし溢れ出る才能を、
若さと力で受けとめて書いたこの小説の魅力に、
私は抗うことは出来なかった。
どれほどついていない人生だとしても、
自分の信じるものを大切にしていけば、
いつか光がさしてくる日がくる、
というこの小説は、
大きな肯定に充ちている。
また観察者であった“僕”が、
いつしか主役になっていくプロセスも見事だ。

北方謙三
少年期から大人まで描かれた男の人生がどこに行き着くか、
そんなことはどうでもよくなってくる。
細かい齟齬など混沌に呑みこまれ、
方々で人々の叫びや喚きや歓声があがっている。
ここに描かれたのは人生であり、
それは小説がなすべきことだった、
という読後の強い思いもあった。

宮城谷昌光
過去に『ふくわらい』というすぐれたものがあり、
私の胸裡にそれがあったので、
今回の『サラバ!』に大いに期待したが、
落胆のほうが大きかった。
自伝的とおもわれる要素にひきずられて、主題がぼけた。
小説的均整が悪い。
これが氏の小説か、と疑いたくなるほど
理知的なものを感じなかった。

高村薫
(引用者注:「あなたの本当の人生は」と共に)
小説の書き方がよく言えばおおらか、
悪く言えば粗い点で共通していた。
最後に自分は「そもそも男ですらないかもしれない」という暴露があって、
小説の土台が根こそぎにされる。
違和感の正体は視点の定まらなさだったわけだが、
作者はなぜこんな自己言及をしたのか。
あえて性別不詳の視点を取るならば、
もっと違った世界が出現してこなければならないのだ。

宮部みゆき
明るくてエネルギッシュで奇天烈でナイーブな
西加奈子ワールドの(現時点の)集大成である『サラバ!』のご受賞は、
直木賞にとっても嬉しいことです。

東野圭吾
私は、でかい×をつけた。
夫への手紙の差出人を知った時点で妻が激怒するのは、
結末で明かされる真相から考えると、
全く矛盾している。
(引用者中略)問題の不整合は、
他の部分の辻褄合わせのために発生したものだと私は睨んだ。
本作を強く推す意見を聞き、
整合性の不備を打ち消すだけのものがあるのだなと感じた。
私だって、お祭り騒ぎは大好きだ。
受賞者を祝うシャンパンを気持ちよく飲みたくて、
最後は躊躇いなく○をつけたのであった。

桐野夏生
この作品の白眉は、何と言っても主人公の姉の造型に尽きる。
(引用者注:主人公の)内省的でシニカル、
かつユーモアを孕んだ語り口は、
作者がアーヴィングやサリンジャーなどの
アメリカ文学に親しんだことがよくわかって楽しい。
両親の離婚の原因や、幼稚園時代など、
蛇足ではないかと感じられる個所もあったが、
勢いが感じられる。

浅田次郎
言葉を自在に振り回すことのできる才能のおかげで
少しも退屈しなかった。
堂々たる長篇というよりも、
短篇の集積を読むような面白さがあった。
持ち前のオリジナリティを損わずに、
小説としての普遍的な説得力を身に付けた、とも言えよう。
しかし、そうした成長の代償として、
上巻に見られる一種の神秘性が、
下巻ではやや世俗的になったとも思える。


これで先の直木賞候補全作品を読了
順位付けすると、
1位:西加奈子「サラバ!」
2位:青山文平「鬼はもとより」
3位:万城目学「悟浄出立」
4位:木下昌輝「宇喜多の捨て嫁」
5位:大島真寿美「あなたの本当の人生は」

このブログでの感想は、それぞれ↓をクリック。

鬼はもとより
http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20150304/archive

悟浄出立
http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20150409/archive

宇喜多の捨て嫁
http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20150317/archive

あなたの本当の人生は
http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20150221/archive


なお、作者の前直木賞候補作「ふくわらい」の感想ブログは↓をクリック。

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20130329/archive

この感想ブログの中で、

確実な小説世界を構築する力があり、
遠からず直木賞を受賞するだろう。

と書いていたのが、
今回的中し、嬉しい。


『真夜中のゆりかご』  映画関係

〔映画紹介〕

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2010年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞した
「未来を生きる君たちへ」を作った
デンマークの女性監督スサンネ・ビア
脚本家アナス・トーマス・イェンセン
コンビによる作品。

私は「未来を生きる君たちへ」は鑑賞当時、
5点満点を付けたが、
本作も、その実績を違えない見事な映画だった。

「未来を生きる君たちへ」の感想ブログは、↓をクリック。

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20110816/archive

刑事のアンドレアスは、
幼児虐待の案件を取り扱っていた。
薬物依存のカップル、トリスタンとサネが
育児放棄をしている悲惨な現場に踏み込んだのだ。
母親の方はまだまともで、
幼児に愛情を注ごうとしていたが、
父親は赤子を邪魔者扱いして
妻にもそれを強制していた。
アンドレアスは、汚物にまみれた幼児を救出するが、
暴力を振るっているわけではないので、
また夫婦の元に戻さざるを得なかった。

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実はアンドレアスの家庭にも同じ年頃の幼児がおり、
他人事には思えないのだった。

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アンドレアスの妻アナは幼児の夜泣きに悩み、
アンドレアスが深夜車に乗せてあやしたり、
アナが深夜、乳母車に乗せて近所を歩いたりしていた。

ある日、アンドレアスの息子が突然死してしまう。
通報しようとするアンドレアスに対し、
妻は「通報したら死ぬ」と口走る。
悩んだ末、アンドレアスは
トリスタンの家に忍び込み、
幼児を取り替えてしまう。
幼児がむざむざ殺されるのを防ぎ、
また、妻も救われると思ったからだった。
しかし・・・。

トリスタンは死体を持ち出し、
奪われたと主張。
アンドレアスは同僚のシモンと共に
夫を尋問する。
また、サネは、
「死んだのは私の子じゃない」と主張する。

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真実を知るのはアンドレアス一人。
しかし、真実を隠して夫婦を追究するのは苦しい。
そのアンドレアスの苦悩を
カメラはじっくりと見つめる。
まさに心理サスペンスであり、
人間ドラマだ。

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そして、後半、思わぬ事件が起こり、
更に、意外な事実が明らかになる。
その中で苦悶するアンドレアスの姿を
アップの映像で凝視する。

人間にとって幸福とは何か、
真実とは何か、
正しい生き方とは何かを
極限状況の中で追い求めるドラマだ。

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アンドレアスの母親、
妻の両親も
事件の遠景として描かれ、
離婚の痛手でアルコール依存症になっている同僚のシモンも
大きな役割を果たす。

アンドレアスの魂は救済されるのか、
それはどのような形なのか。
北欧の水辺の情景を交えながら
描く監督の手腕は鮮やか。

アンドレアスを演じるのは、ニコライ・コスター=ワルドー
端正な顔だちで、
幸福な家庭を襲った悲劇を好演する。

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よかれと思ってしたことが
予期せぬ方向に転がり、
罪なき者を罪人として弾劾する立場に立ちながら、
一番罪深い者は誰かを知っている、
まさに内面葛藤の極み、
ドラマの中のドラマである。

緊迫感に満ち、
一瞬も画面から眼を離せない
充実した内容の作品だ。

5段階評価の「4.5」

予告編は↓をクリック。

https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=cNDQZa8fAtc


タグ: 映画




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