ちょっとソウルへ  旅行関係

先日、
ゴールデンウィークなのに、
どこかへ行くという画策をしない、
という話を書きましたが、
それに反するようですが、
ゴールデンウィークの狭間、
短く「飛び」ます。

行き先は韓国
先日の南米旅行でJALのマイルが1回旅行できるほど貯まり、
丁度観たいミュージカルをやっていたので、
飛行機代ゼロで行ってみることに。
ゴールデンウィークの狭間になったのは、
マイレージの特典旅行の枠が
この時期しか取れなかったからです。

そういうわけで、
本日朝10時05分の飛行機でソウルへ。
ミュージカルを3本観て、
5月2日に帰国いたします。
ホテルは明洞(ミョンドン)ど真ん中の安いところ。
おいしいものを食べる予定です。

いつものように、
ホテルのWiFi次第では、
リアルタイムの報告もいたします。


『カルテット! 人生のオペラハウス』  映画関係

〔映画紹介〕

クリックすると元のサイズで表示します

ダスティン・ホフマン初監督映画。
引退した音楽家たちが暮らす施設での人間模様を描く。

第一線を退いた音楽家たちが生活している老人ホーム、ビーチャム・ハウス。
そこでは、老いた音楽家たちが平穏な余生を過ごしていた。
その一方で、経営難でホームの存続問題が起こり、
起死回生のコンサートが計画されていた。
そんな時、スター歌手だったジーン(マギー・スミス)が入居して来、
先住者の中に波風が立つ。
というのは、
レジー(トム・コートネイ)、
シシー(ポーリーン・コリンズ)、
ウィルフ(ビリー・コノリー)
とは、かつてカルテット(四重奏)のCDを出したことのある仲間だったが、
ジーンのわがままで関係が壊れていたのだ。
しかも、レジーとジーンはかつて9時間だけ夫婦だったことさえあった。
三人はさりげなくコンサートでカルテットを復活させることを提案するが、
もはや人前で歌わないと決めていたジーンの強固な拒否にあう。
カルテットは復活するのか、
ホームの存続は大丈夫か・・・。

引退した芸術家たちの養老院での話、
と聞くと、
ジュリアン・デュビビエ監督の名作「旅路の果て」(1936)を思い出す。

舞台は南仏サン・ジャン・リヴィエルにある俳優養老院。
そこではかつての日のはなやかな舞台をただ一つの誇りとして、
俳優たちが余生を送っている。
そのうちの一人、
マルニーは古典劇屈指の名優とうたわれていたが、
愛人を同僚サンクレーに奪われて以来、
俳優としての自信を失い、隠退した。
ある日ここへ突然
尾羽うち枯らしたサンクレールが現れ、
マルニーとの確執が再燃する。
一方、以前から経営難であった養老院は、
万策つきいよいよ解散する破目になった。
しかし、院主の尽力で、パリの新聞社が義えん金を出し、
現役の名優たちによる慈善興行を行いこれを救うことになり・・・

ちょっと似てますね。
さしずめダスティン・ホフマン版「旅路の果て」というところか。
(原作あり)

しかし、俳優の栄光とくらべ、
オペラ歌手の栄光との落差は数倍大きいはず。
俳優は自分の演技は見れないが、
歌手は自分の声を自分の耳で聞くことが出来るからだ。
声の衰えは、自分自身が一番よく分かる。
実際、疲れた声の声楽家ほど悲惨なものはない。
そういう意味で、
過去の栄光が華やかなだけに、
そのかげりの中で生きる登場人物たちの
心の屈折は計り知れないものがある。
ジーンのした、もう歌わない、という決意は納得出来る。

出演者は実際の老歌手たちが出演し、
リアル感を出す。
ところどころ挟まれる演奏が楽しい。
ヴェルディやプッチーニやロッシーニのアリアも演奏される。
最後のところは上手に処理した。

音楽を題材に、
音楽を愛する人々の哀歓を描いて、味のある作品である。

5段階評価の「4」。


タグ: 映画

ベルギー・オランダ旅行記・3 再びブルージュ  旅行関係

ツァー団は、
ゲントからブルージュに戻りました。

クリックすると元のサイズで表示します

ブルージュは、
12〜13世紀には西ヨーロッパ第一の貿易港として栄えました。
しかし、15世紀に入ると、
北海とを結ぶ水路が沈泥のため浅くなり、
商船の大型化もあって、
船が出入りできなくなってしまい、
都市としての機能を喪失してしまいました。
そのため、都市化が進まず、
結果として、
中世の景観をそのまま留めることになったのです。

クリックすると元のサイズで表示します

旧市街は世界遺産に登録され、

クリックすると元のサイズで表示します

堀が回りを囲んでいます。

クリックすると元のサイズで表示します

南東に位置するゲント門

クリックすると元のサイズで表示します

内側から見たところ。
中央の門から跳ね橋が見えます。

クリックすると元のサイズで表示します

大きな船が通る時は、跳ね橋が上がります。

クリックすると元のサイズで表示します

跳ね橋が戻って来ました。

クリックすると元のサイズで表示します

あと、もう少し。

クリックすると元のサイズで表示します

ようやく外と繋がりました。

クリックすると元のサイズで表示します

救世主大聖堂

クリックすると元のサイズで表示します

教会内部。

クリックすると元のサイズで表示します

ステンドグラスがきれいです。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

絵画も豊富。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

商店街を歩いてみます。

クリックすると元のサイズで表示します

ベルギーですから、
チョコレート屋さんが多い。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

板チョコはなく、

クリックすると元のサイズで表示します

こうした一つ一つの商品です。

クリックすると元のサイズで表示します

貝を球形に巻いたレストランのオブジェ。

クリックすると元のサイズで表示します

お土産も独特。

クリックすると元のサイズで表示します

石畳の町を

クリックすると元のサイズで表示します

馬車が行きます。

クリックすると元のサイズで表示します

広場にはお茶のテーブルが並んでいます。

クリックすると元のサイズで表示します

馬に水をやるところ。

クリックすると元のサイズで表示します

ここは、ベギン会修道院

クリックすると元のサイズで表示します

1245年にフランドル伯夫人によって設立された、
女子修道院。
世界遺産です。

クリックすると元のサイズで表示します

美智子皇后が皇太子(当時)から求婚された時、
それを受けるかどうか、
ここに1カ月こもって、お祈りしたといいます。

クリックすると元のサイズで表示します

北海の風のため、
木は斜めに。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

ここが出口。

クリックすると元のサイズで表示します

この表は「愛の湖公園」と呼ばれており、

クリックすると元のサイズで表示します

白鳥たちがのんびりと過ごしています。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

高さ122mの塔を持つ、聖母教会

クリックすると元のサイズで表示します

周辺には、
中世の面影を残す建物群が。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

昔、娘が旅行業の勉強をしたことがありましたが、
その時、教官に
「今まで行ったところで、どこが一番好きですか」
と訊いたところ、
教官の答は「ブルージュ」だったといいます。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

市庁舎

クリックすると元のサイズで表示します

聖血礼拝堂

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

裁判所

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

町の中心、マルクト広場

クリックすると元のサイズで表示します

フランスの圧政に対して闘った英雄の像。

クリックすると元のサイズで表示します

正面にあるのは、町のシンボル、鐘楼

クリックすると元のサイズで表示します

これも世界遺産「ベルギーとフランスの鐘楼群」の一つ。
高さ83mの塔には、
366段の階段で登ることが出来ます。

クリックすると元のサイズで表示します

「その町の最も高い所に登る」
という方針を持つ私は、さっそく登ってみました。

クリックすると元のサイズで表示します

途中で見たカリオン(組み鐘)の装置。

クリックすると元のサイズで表示します

47個の鐘が組み込まれ、
15分ごとに美しい音色を聴かせます。

クリックすると元のサイズで表示します

仕組みはオルゴールと同じ。

クリックすると元のサイズで表示します

塔の上から見たブルージュの町。

クリックすると元のサイズで表示します

屋根の色が統一されて、きれいですね。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

眼下にマルクト広場が見えます。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

運河を行く船が見えます。

クリックすると元のサイズで表示します

運河クルーズは、
町の観光産業の一つ。

クリックすると元のサイズで表示します

船の上から中世の町並みを眺められるので、人気です。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

私も乗ってみました。

クリックすると元のサイズで表示します

ブルージュ(Brugge)とは、「橋」の意味で、

クリックすると元のサイズで表示します

町を縦横に流れる運河には、
50以上の美しい橋がかかっています。

クリックすると元のサイズで表示します

運河から見る町は、
また別な表情を見せます。

クリックすると元のサイズで表示します

この犬、景色の一つのように動きません。

クリックすると元のサイズで表示します

「愛の湖公園」にやってきました。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

白鳥たちを身近に見ることが出来ます。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

その他、町の表情あれこれ。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

夕方のブルージュの町。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

これでブルージュの町とはお別れです。
明日は、アントワープとブリュッセルへ。


『家鳴り』  書籍関係

世の中、今日からゴールデンウィークだそうで。
前半3日、後半4日の連休があり、
間の平日3日間を休めば、10連休も可能だそうです。

今、私の住んでいるマンションは、
大掛かりな塗装工事をしており、
すっぽり布で覆われ、
ベランダの荷物を撤去したり、大変ですが、
この工事も明日から6日までは休みだそうです。

毎年、ゴールデンウィークには、
メキシコに行ったり、
ドバイに行ったり、
インド,ネパールに行ったり、
ニューヨークに行ったり、
いろいろ画策しましたが、
定年を迎えた今年は、
その実感はありません。

まあ、毎日が日曜日の「サンデー毎日」状態。
気楽と言えば、気楽な毎日を過ごしています。
とにかく本が沢山読めるので、
このブログに掲載する書籍情報も沢山貯まっています。

そこで、また書籍紹介を。


〔書籍紹介〕

クリックすると元のサイズで表示します

家鳴り=やなり、と読みます。
篠田節子の短編集。

「幻の穀物危機」

山梨あたりのペンション村を舞台に
ミニ食糧危機の実相を描く。
東京西部で大地震が起こり、
逃げて来た避難民との間に軋轢が起こる。
農家に食べ物を求めて来た避難民に対して
野菜や穀類の販売を拒否する。
日頃「穀物危機が来る」と言っていた隣人は
予想が当たったとばかりにほくそえみ、
食糧を求めて来た人に辛く当る。
やがてそれは食糧の争奪戦となって無法地帯と化していく。
温厚だった町人も鬼となり、
妻さえも子供に食べさすために手段を選ばなくなる。
わずか一週間の間に
人間の本性がむき出しになる。

実はこの作品、
発表されたのは1996年。
東日本大震災より15年前である。
あの時の秩序立った避難民の対応と
全国からの支援で、
篠田の予見は幸いにして外れたが、
一つ間違えば、
そうなっいたかもしれないということで、
背筋が寒くなる小説だ。

「やどかり」

実務研修のために
霞が関から地方自治体の教育センターに出向した哲史は、
父母に育児放棄された姉弟の面倒を見ることになる。
学業成績は絶望的だという中学三年生の智恵の勉強を見てやることにした哲史だったが、
次第次第に智恵にからめとられていく。
やがて、病気の母親まで哲史の家に引っ越して来るようになり・・・
ラストのくだりは戦慄した。

「操作手(マニピュレーター)」

介護に疲れた家族が
実験段階の介護ロボットを導入する。
老母の須磨子がヘルパーを受け入れないからだ。
ヘルパーを受け入れないのにはわけがあり、
昔夫を奪った女の姿にヘルパーを重ねるからだ。
やがて介護ロボットと須磨子の間に
不思議な交流が生まれ・・・
介護ロボットを通じて、
日本の介護やロボット技術の行く末まで見通した
奥の深い一篇

「春の便り」

老人病院に入院している老婆のところを
昔飼っていた老犬が訪ねて来る話。
老人病院という「余生」での幸福を扱っている。

「家鳴り」

趣味で始めた手芸品が世間から認められて莫大な収入を生み、
夫の健志は会社が倒産したこともあって、
主夫業に専念する。
ペットロスでジャンクフードしか食べなくなった妻の治美の
食生活を改善するために
料理に取り組んだ健志は、
作る楽しみに溺れ、
妻もせっせと食べる。
その結果、どんどん太った妻は、
トイレに入ることも出来なくなり、
やがて家のドアから出ることも出来なくなり・・・
ある一つの夫婦の崩壊を描いて興味深い。

「水球」

直径20センチほどのガラス球は水で満たされ、
中には藻と一匹の魚。
球の内部は安定した生態系が維持されている。
中沢が部下の結婚式の二次会で得た景品だ。
中沢は証券会社に勤め、
密かに不倫をしている。
その不倫関係を終わらせた時、
相手の自殺未遂事件が起こる。
中沢の会社も倒産する。
妻からは離婚届けを突きつけられる。
行き場のなくなった中沢は、
水球の中の魚を解放してやろうと、
水球を破るが・・・
閉塞感に満ちたサラリーマンの生態を描く一篇。

「青らむ空のうつろのなかに」

家庭の事情で農場に預けられた光。
その農場は、問題児たちを集めて農業に従事させながら更生する施設。
しかし、その中でも光は孤立し、いじめを受ける。
そんな光が唯一心を動かされたのが、
小さな子豚を育てることだった。
しかし、育てた子豚もやがて
食用に出荷するという運命が待っていて・・・

                                           どの作品も、
少しホラーがかり、少しファンタジーがかっている。
しかし、この短編集が1999年に単行本として刊行された、
14年前の作品群であることが信じられないくらい
古びていない
時代を鋭敏に眺め、
先取りして作品化する篠田節子の真骨頂といえる短編集だ。


『リンカーン』  映画関係

〔映画紹介〕

クリックすると元のサイズで表示します

第16代アメリカ大統領、
エイブラハム・リンカーンを描く、
スティーブン・スピルバーグ監督渾身の作品。

リンカーンはアメリカの歴代大統領の中で、
最も人気の高い大統領だが、
その最大の功績は奴隷解放を成し遂げたことだと異論を挟む者はおるまい。

しかし、3世紀にわたって蓄積され、
アメリカ南部のプランテーションの労働力を支えた悪しき制度である。
反対勢力の力も大きく、
実際、彼が1860年、
大統領選挙に勝ったことにより、
南部諸州は合衆国を離脱、
アメリカ連合国を作り、
新憲法を制定して、
独自の大統領を選んだ。
これを合衆国に復帰させるために起こったのが南北戦争
アメリカ合衆国独立以来初の、
そして唯一の内戦である。

映画は、リンカーンが大統領に再選され、
合衆国憲法修正第13条
(第1節 奴隷制もしくは自発的でない隷属は、
アメリカ合衆国内およびその法が及ぶ如何なる場所でも、
存在してはならない。
ただし犯罪者であって関連する者が正当と認めた場合の罰とする時を除く。
第2節 議会はこの修正条項を適切な法律によって実行させる権限を有する。)

を成立するまでの政治的攻防を描く。

ドリス・カーンズ・グッドウィンによる伝記本『リンカーン』を原作とし、
脚本はスピルバーグ監督作「ミュンヘン」のトニー・クシュナー
当初のシナリオは500ページにわたる膨大なもので、
上映時間9時間が必要。
その中から中枢の部分である
合衆国憲法修正第13条の下院での成立への28日間だけに絞った脚本が見事だ。

修正第13条が提案された時は、
合衆国憲法は60年以上にわたって新しい修正条項が採択されていなかった。
しかも、修正には議会の3分の2の賛成が必要。
上院では1864年4月8日、
38対6で修正提案は可決されていたが、
民主党の強い下院では、
3分2以上の可決を得ることが出来ず拒絶されていたのだ。
なにやら日本のねじれ国会を想起させられる状況だが、
反対する民主党議員の一人一人に働きかけて
賛成票を投じさせる工作が描かれる。
奴隷制には心底うんざりしているのだが、
約400万人の黒人が解放された時の影響を考えて反対する者、
将来の黒人への参政権付与も考慮して逡巡する者、
議員辞職後の役職を餌に食いつく者・・・
微妙な票読みが続く。

一方、南北戦争は既に4年以上続いており、
既に62万人以上の人々が戦死していた。
リンカーンの属する共和党の内部でも
奴隷解放よりも1日も早く和平に応じるべきだ
という考えが強くなっており、
事実、南部軍からの講和の申し出もあった。
しかし、リンカーンは、
奴隷制度を永遠に葬り去る
合衆国憲法修正第13条を
下院議会で決定するまでは戦いを終わらせないという強い決意があった。

実は、1862年9月22日、奴隷解放宣言が出されていたが、
開放された奴隷はごくわずかであり、
その宣言は戦時の立法措置に過ぎなかったため
南北戦争終結と共に効力を失い、
解放された人々は再び奴隷になってしまう。
奴隷を永久に解放するには、
合衆国憲法修正第13条を議会で可決させる必要がある。
しかし戦争は既に終わる方向に進んでおり、
可決するまでに戦争が終結すれば
奴隷解放は不可能になるため、
2月までに下院で可決させなければならなかった事情があった。

また、家庭の問題もあった。
学生だった長男ロバートが
両親の反対を押し切って北軍に入隊し、
三男のウィリーを病で亡くしたことで
精神的に苦しんでいた妻・メアリーは、
「戦争でロバートまで失えばあなたを一生許せない」
と責める。

冒頭の南北戦争の肉弾戦で、
どれほど悲惨な戦争であったかが描かれるが、
リンカーンの中では、
自らの理想と戦争によって生じる多くの犠牲の間で
孤独なジレンマに苦悩していた。
大統領として、父親として、夫として、1 人の人間として・・・。

こうした背景が巧みに描かれ、
1865年1月31日、下院での採決の日を迎える。
一人一人に賛否を問うやり方が実にドラマチック。
そして、119対56で可決。
3分の2を越えることわずか2票。
特別に投票した議長の票まで入れてである。

しかし、批准のために各州に提出された期間、
戦争は続き、沢山の血が流された。
南北戦争は、
1865年4月9日、
南軍のリー将軍が北軍のグラント将軍に降伏して終わりを告げた。
リンカーンが劇場で至近距離から撃たれるのは、
そのわずか5日後の4月14日。
その翌日4月15日早朝、リンカーンの死が確認された。

映画は、その死の床のロウソクの中に、
演説するリンカーンの姿を映し出して終わりを告げる。

民主主義という、
時間も手間もかかる政治的仕組みで、
一つの決定をすることの困難さ。
しかも、利権がからみ、更に宗教までがからむ。
だが、アメリカの奴隷解放がなかったら、
その後の歴史がどうなっていたかを想像すれば、
リンカーンの選択が正しかったことは明らかだ。
サッチャーは
「政治にコンセンサスなどない。あるのはリーダーシップだ」
と言ったそうだが、
まさにリンカーンという一人の人物の信念が
歴史の重い歯車を動かしたのだ。
それは欧州やアジアにはびこっていた奴隷制をも崩壊させる力となった。

今は世界的に困難を沢山かかえている。
日本も同じだ。
そんな時代に、
政治とは何か、指導者はどうあるべきかを投げかける
スピルバーグの想いが伝わる立派な作品。
150年前のアメリカの歴史の中に
自由と平等を訴えた人物を描いて胸を打つ感動作だ。

ダニエル・デイ=ルイスがリンカーンを入神の演技で演じ、
アカデミー賞主演男優賞を受賞。
サリー・フィールドが妻のメアリー・トッド・リンカーンを演じ、
画面を引き締める。
奴隷制度廃止を推進した共和党議員タデウス・スティーブンスに
トミー・リー・ジョーンズ
彼が廃止を訴えた背景が最後になって明かされるのもなかなか味がある。

「アルゴ」のベン・アフレックが
監督賞候補から外されるというハプニングがなければ、
十分アカデミー賞作品賞も取れただろうに。運がなかった。

5段階評価の「5」。



タグ: 映画




AutoPage最新お知らせ