2009/2/1

紙芝居  

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幼い頃に一度だけ、紙芝居を見たことがあります。

近所に小さな広場があつて、其処(そこ)に、自転車に乗つたおぢさんが、或る日の午後、何処(どこ)からともなくやつて来て、なにやらごちやごちや云ひながら、始まつたのが紙芝居でした。幼い小生は、紙芝居を見るのが生まれて初めてだつたので、其れはもう興奮しました。鼻息荒く。だけど、不思議なことに、紙芝居の内容は、全く覚へてゐないのです。あの紙芝居は「月光仮面」だつたのか?或ひは「少年ケニア」だつたのか?其れとも「鉄腕アトム」だつたのか?いくら思ひ出さうとしても、皆目わかりません。唯一覚へてゐることと云へば、あの時、おぢさんから買つて食べた「わらびもち」が、すこぶる美味しかつたことです。今でも時々、スーパーなどで「わらびもち」を買つて食べますが、あの「わらびもち」に比べたら、月と鼈(すつぽん)、下駄に焼味噌です。其れぐらゐ、あの「わらびもち」は異常に美味しかつたのです。其れこそ、毎日でも食べたいぐらゐ。だけど、悲しい哉(かな)、あの「わらびもち」を食べることは、もう二度と出来ませんでした。何故なら、あのおぢさんは、あの日以来、あの広場に二度とやつては来なかつたからです。おぢさんに一体何があつたのか?其れも皆目わかりませんが、兎に角、あの日食べた「わらびもち」の味だけは、忘れることが出来ません。
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