2009/2/10
夕顔 U 源氏物語
光源氏は乳母の家からの帰り際になって、先ほどの夕顔の花が乗せられていた扇を取り出してしみじみと見ると、よい香りとともにきれいな字で歌が書かれてありました。
心あてにそれかとぞ見る白露の 光そへたる夕顔の花
*心当たりでそうではないかと見えたあなたは、光源氏様ではないでしょうか
さっそく惟光に隣の家に誰が住んでいるかを調べさせると、国司の次官の名だけをいただいている人の家で、風流好きな妻女や女房勤めの姉妹たちが出入りしているともことで、では女房をしていう中の一人が戯れによこしたものだろうと、納得したのでした。そうして光源氏は
寄りてこそそれかとも見め黄昏れに ほのぼの見つる花の夕顔
*もっと近くに寄ってこそ誰だろうと見てごらんなさい 黄昏にほのかに見えたこの私の顔を
そう切り替えした歌を畳紙に書いて先ほどの随身を遣わしました。ですが、返歌がすぐに来なかったので、体裁が悪く思っていたのに返歌をもってきたので、どんな風に答えたらよいのかなどと言い合っている様子に、随身は心外だと帰ってきてしまいます。
その日は目的の場所である六条の御息所の邸宅に泊まり、翌朝は少し寝過ごして、日差しが出た頃に出かけたのでした。そしてその日の朝もあの五条の蔀風の前を通りますが、あの扇のことがあってからそこを行き来する度に、「どんな人が住んでいるのだろうか」と、その家のことが気になってしまうのでした。
幾日か経ってから、惟光が隣の家のことを知っていそうなものに話を聞いてきたところによると、この五月ごろからそっと来て、家のものにも素性は明かしていない人がいるということで、とても若い女たちがいるらしい影が簾から見えたりもしている。その報告を受けた光源氏は、もっと詳しいことが知りたいと思うようになり、それに惟光も同調するのでした。
0
心あてにそれかとぞ見る白露の 光そへたる夕顔の花
*心当たりでそうではないかと見えたあなたは、光源氏様ではないでしょうか
さっそく惟光に隣の家に誰が住んでいるかを調べさせると、国司の次官の名だけをいただいている人の家で、風流好きな妻女や女房勤めの姉妹たちが出入りしているともことで、では女房をしていう中の一人が戯れによこしたものだろうと、納得したのでした。そうして光源氏は
寄りてこそそれかとも見め黄昏れに ほのぼの見つる花の夕顔
*もっと近くに寄ってこそ誰だろうと見てごらんなさい 黄昏にほのかに見えたこの私の顔を
そう切り替えした歌を畳紙に書いて先ほどの随身を遣わしました。ですが、返歌がすぐに来なかったので、体裁が悪く思っていたのに返歌をもってきたので、どんな風に答えたらよいのかなどと言い合っている様子に、随身は心外だと帰ってきてしまいます。
その日は目的の場所である六条の御息所の邸宅に泊まり、翌朝は少し寝過ごして、日差しが出た頃に出かけたのでした。そしてその日の朝もあの五条の蔀風の前を通りますが、あの扇のことがあってからそこを行き来する度に、「どんな人が住んでいるのだろうか」と、その家のことが気になってしまうのでした。
幾日か経ってから、惟光が隣の家のことを知っていそうなものに話を聞いてきたところによると、この五月ごろからそっと来て、家のものにも素性は明かしていない人がいるということで、とても若い女たちがいるらしい影が簾から見えたりもしている。その報告を受けた光源氏は、もっと詳しいことが知りたいと思うようになり、それに惟光も同調するのでした。
0